中国がEV主戦場に 上海ショー開幕、強まる環境規制

 【上海=杜師康佑、竹内宏介】上海国際自動車ショーが19日、開幕した。ひときわ大きなスポットライトを浴びたのが電気自動車(EV)だ。世界的な環境規制の強まりでEV需要は拡大する見通し。中国ではEVの現地生産が2018年から義務づけられるため、各社は中国でのEV強化策を相次ぎ表明した。最大の自動車市場である中国がEVの主戦場になろうとしている。

 「中国で電動化を推進する」。独フォルクスワーゲン(VW)で乗用車ブランド部門を率いるヘルベルト・ディース氏は19日、中国でのEV強化を打ち出した。マティアス・ミュラー社長も「中国が第一」と断言する。

 VWは中国の販売台数で首位を走り、25年には世界で販売するEV100万台の約6割を中国に振り向ける。上海国際自動車ショーでEVコンセプト車「I.D.CROZZ(クロス)」を世界初公開するなど、中国がEVの重要市場である姿勢を鮮明にした。1度の充電で走行できる航続距離は500キロメートルで、3年後の生産開始を予定している。

 米ゼネラル・モーターズ(GM)も「ビュイック」ブランドのプラグインハイブリッド車(PHV)「ヴェリテ5」の販売を中国で始めた。

 中国は09年に米国を抜いて世界最大の自動車市場に成長した。一方で排ガス問題解決のため、中国政府は環境規制を強めている。その一環として、環境負荷が小さい新エネルギー車(新エネ車)の普及に力を入れる。18年から自動車メーカーにEVやPHVといった新エネ車生産を義務づける。20年には年間生産台数の12%相当の新エネ車生産が求められる見通し。

 中国のEV市場で先行する欧米勢を日本車メーカーも猛追する。日産自動車はすでに中国でEVを販売しているが、品ぞろえを拡充する。日産の中国合弁会社・東風汽車の関潤総裁は19日、18年以降に順次「日産」や「インフィニティ」、「ヴェヌーシア」ブランドでEVを本格投入する考えを示した。関総裁は中国のEV市場シェアで「トップ3を目指したい」と強調した。

 ホンダも中国での新エネ車戦略を加速する。PHVの投入時期を20年から18年に前倒しするほか、燃料電池車(FCV)も導入を検討する。トヨタ自動車は中国で「EVを数年内に投入する」との方針を明らかにした。

 高い技術力でガソリン車やハイブリッド車(HV)の低燃費を実現することで世界市場を席巻してきた日本車メーカー。上海国際自動車ショーで新エネ車戦略をアピールできるか。その巧拙が、中国での事業拡大の試金石にもなりそうだ。

nikkei.com(2017-04-19)