「日本の50ccでは戦わない」、ホンダとヤマ発の2輪事業提携

 ホンダとヤマハ発動機が2016年10月5日に発表した、排気量50cc以下の第一種原動機付自転車(原付一種)における提携。ホンダからヤマハ発動機にOEM(相手先ブランドによる生産)供給することが柱だ。加えて、同排気量のビジネススクーターの共同開発や、電動2輪車の普及に向けた提携を検討する。ホンダ取締役執行役員の青山真二氏と、ヤマハ発動機取締役常務執行役員の渡部克明氏が提携の経緯や狙いについて、同日に開催した記者会見で説明した。要旨は次の通り。

提携の経緯

ヤマハ発動機の渡部氏 2016年2月に我々からホンダに提案した。半年かけて話し合い、基本合意に至った。(ヤマハ発動機が単独で)原付一種を継続して開発するのは非常に難しい。日本と欧州しかない50cc級の2輪車の市場は縮小している。

 (撤退する選択をしなかったのは)原付一種の2輪車は、多くの人が初めて2輪車を体験するものだから。なんとかこの原付一種の2輪車を残したかった。社内で検討した結果、総合的に考えてホンダと協業することを選んだ。

ホンダの青山氏 原付一種の市場は減少しており、ビジネス面で厳しい状況だ。今後も市場は縮小する見込みである。原付一種の保安基準や排ガス基準が厳しくなる。(対策費が増えて車両の)価格は上がる。市場はさらに小さくなる。

 それでも、国内における原付一種の2輪車の保有台数は600万台と多い。国内の「2輪車文化」を盛り上げたい。(2輪車への入門車と言える)原付一種の開発を続けていくことは、社会的責任だと考えている。

 現在はヤマハ発動機とLOI(letter of intent:基本合意書)を結んだ段階。2017年3月頃に具体的な内容を詰めて正式に契約する。2018年中に、ヤマハ発動機に2車種をOEM供給する。

経営への影響

ヤマハ発動機の渡部氏 影響は限定的とみている。台湾で生産する2輪車の生産規模は、約35万台。そのうち4〜5万台が影響を受けるが、それは吸収できると考えている。OEM供給を受けるためにエンジンやシャシーはホンダと共通になるが、デザインで差異化できる。

ホンダの青山氏 熊本製作所で(ヤマハ発動機の2輪車を)生産する。生産規模が増えることのメリットがあると考えている。(経営への影響を示す)具体的な数字はない。

電動2輪車の協業

ホンダの青山氏 電動2輪車は、それぞれ独自に技術開発してきた。だが普及に至っていない。課題は四つある。航続距離が短いこと、充電時間が長いこと、登坂性能の問題、コストが高いこと――である。まずは(電動2輪車を普及させるための)基盤作りの検討を進めたい。協業の成果については競合他社にも提案することで、電動2輪車の普及に取り組んでいく。

今後の協業拡大

ホンダの青山氏 これ以外はない。海外展開については、何の話しもしていない。また、販売面では協業しない。

ヤマハ発動機の渡部氏 「ジョグ」と「ビーノ」以外については決めていない。海外ではガチンコで(ホンダとの競争を)やる。ただ日本の50ccでは戦わないということ。

今後の2輪車開発の方向

ホンダの青山氏 (50cc級よりも)125cc級の2輪車市場を大きくしていくのが望ましいと考えている。125cc級の原付二種がグローバルのスタンダードになっている。

ヤマハ発動機の渡部氏 125cc級2輪車の免許を取りやすくして、125ccにシフトするのがあるべき姿だ。

==清水 直茂==

《追記》
☆本田技研工業情報 「Hondaとヤマハ発動機が原付一種領域における協業の検討を開始」ここをクリック

nikkeibp.co.jp(2016-10-07)