トヨタ「2050年、エンジン車ゼロを目標」

燃料電池車などへ移行

 トヨタ自動車は14日、2050年までにエンジンだけで走る自動車の販売をほぼゼロにする長期目標を発表した。ハイブリッド車(HV)や燃料電池車(FCV)の比率を高めて新車の走行時の二酸化炭素(CO2)排出量を10年比9割減らす。自動車の開発競争の中心がエンジンから電池や制御ソフトなど「電動化技術」に移り産業構造にも影響を与えそうだ。

 トヨタは5カ年の環境計画を設定し、HVの普及などに取り組んできた。14日は新たに21年3月期までの計画を公表するとともに、初めて50年までの長期目標「トヨタ環境チャレンジ2050」を発表した。

 「長年にわたってHVやFCVの開発に取り組んできたが地球環境は日々悪化している。20年、30年先を見据えたより高い水準の新たな挑戦が必要と考えた」。14日の説明会でトヨタの内山田竹志会長は強調した。

 長期目標では新車の走行時のCO2排出量を9割減らす方針だ。車両1台生産する際に排出するCO2の量も段階的に削減しゼロを目指す。工場で省エネを一段と進めると同時に、風力発電など自然エネルギーや水素の利用を進める。

 記者会見した伊勢清貴専務役員は「エンジンだけを搭載した自動車は生き残れない。エンジン車がなくなるのは(自動車メーカーにとって)天変地異だ」と述べた。トヨタは世界で販売するほぼすべての車を50年までにFCV、HV、家庭用電源で充電できるプラグインハイブリッド車(PHV)、電気自動車(EV)とする目標を示した。

 目標の達成に向け、FCVとHVの販売拡大を今後5年間の実行計画の柱に据えた。同社は14年12月に発売したFCV「ミライ」の生産体制を段階的に増強している。17年には年間3千台規模にする。さらに20年をメドに販売台数を一気にこの10倍に当たる3万台以上に引き上げる。国内では月1千台の水準にする。日産自動車のEV「リーフ」と同じ規模だ。

 HVの販売は20年までに14年実績より18%多い年間150万台に増やす。トヨタは1997年に世界初の量産型HV「プリウス」を発売した。HVの累計販売台数は今年7月に800万台を超えた。ただ大半を北米と日本で売っている。今後はコスト低減によって価格を抑えて、中国など新興国でも販売を増やしていく考えだ。

 トヨタはHVで培った制御ソフトなどの技術をFCVやEVなどに幅広く活用できるとみている。燃料電池で作った電気でモーターを動かすFCVは「HVと共有できる部品が多い」(トヨタ幹部)。現在、ミライの価格は700万円台と割高だが、HVの量産効果を取り込んで価格を引き下げていく。

 エコカーの動力源として電池やモーターなどの重要性が高まれば、自動車産業の構造にも影響を与えそうだ。電機メーカーやIT(情報技術)企業にとっては自動車関連事業を拡大するチャンスが広がる。エンジン部品メーカーなどは事業構造の見直しを迫られる。伊勢専務も「トヨタの体質を変えないといけない」と指摘した。新環境目標はトヨタグループの構造改革につながっていく可能性がある。

nikkei.com(2016-08-14)