都市対抗野球 京都市5ー2大津町 京都市・日本新薬、八回一気

 第3日(17日・東京ドーム)

 ▽第1試合=1回戦

京都市(日本新薬)

  000100040=5

  000002000=2

大津町(ホンダ熊本)

 【審】小出(球)清水、玉置、花田(塁)

 京都市が逆転勝ち。四回に浜田の左前適時打で先制。一度は逆転を許したが、1点を追う八回に代打・植田の左中間3ランなどで一挙4点を挙げ、再びひっくり返した。大津町は六回に稲垣、長池の2者連続本塁打で意地を見せたが、先発の荒西が粘れなかった。

代打・植田、千金3ラン

 歓声と嘆息が地鳴りのように響く。京都市の代打・植田が放った勝ち越し3ラン。「入るとは思わなかった」という2年目の若手が大会初打席で、大仕事をやってのけた。

 大胆な代打策だった。八回、敵失で追いつき、なおも2死一、三塁。大津町が右腕・荒西から左腕・三小田にスイッチすると、京都市の岩橋監督も動く。代打・植田・・・。先制打を放った期待の新人・浜田よりも「左に強い」24歳に懸けた。

 投手交代に合わせた出場だったため「少ししかスイングができなかった」というが、心の準備は万全だった。本来は守備固めとして準備することが多いが、六回に逆転を許すと、「守備」より「打撃」に気持ちを切り替えた。「テークバックが小さいので振り遅れないように」。相手投手への対策もしっかり考え、1ストライクから抜けた変化球を左中間席へ運んだ。

 昨年、2年連続8強入りしたチームに今季は4番・中や浜田ら有望な新人が加入、活躍している。その裏では出場機会が減る野手がいる。だが、植田は言う。「控えの選手たちで『俺らが試合後半に活躍しないといけない』と話している」。どんな立場でも、チームの歯車の一つとして動く。この結束力が京都市の底力を生んでいる。【安田光高】

2者連発、熊本の希望に

 野球は筋書きのないドラマという。熊本地震を乗り越えた大津町にとって、2年ぶりの東京ドームは歓喜と落胆が凝縮された、濃密な2時間半になった。

 六回、先頭の稲垣は「原点回帰」をとなえていた。「自分らしく、フルスイングを」。3球目、狙い球のフォークを思いきり振り上げると、打球は高く、美しい弧を描き右翼席へ吸い込まれた。さらなるどよめきは、その直後。長池が初球、またもフォークをとらえた。打球は再び右翼席へ一直線。「前の一発でムードががらりと変わり、余裕があった」。五回まで2安打だったが、わずか2球で試合をひっくり返した。

 試練は終盤に待っていた。八回2死一、二塁から遊撃への内野安打を稲垣が一塁へ悪送球。同点とされ、その後3ランで勝ち越された。ヒーローになるはずだった稲垣の、まさかの失策。「一番大事な場面でミスが出たことに、悔いが残る」と唇をかんだ。

 「特別な夏」を見守ろうとスタンドは外野まで埋まった。岡野監督は「この雰囲気でプレーできた自分たちは幸せ者。勝利で恩返ししたかった」という。

 それでも大きな2本のアーチ、エースの力投、体を張った好守備、全力疾走の攻守交代。一つ一つが熊本の、九州の、希望になったはずだ。【角田直哉】

毎日新聞 東京朝刊(2016-07-18)