AIの研究拠点、ホンダが都内に 自動運転、人材を獲得へ



 ホンダは、未来の自動車技術の中核とされる人工知能(AI)の研究拠点を東京都内につくる方針を固めた。従来の北関東の拠点とは別に、IT関連の人材獲得に適した都内に置く。自動運転の実用化に向けて、従来の技術にとらわれない人材を集める。

 AIの技術者が集まる米シリコンバレーは人件費が高騰しているといい 、アジアの研究機関やベンチャーなどとの連携を強める方針だ。都内は利便性も高く、新拠点の適地と判断したとみられる。

 AIは未来の車の「頭脳」にあたる存在とされる。車載カメラやセンサーが集めた画像情報などから、歩行者や対向車、白線などの道路や周辺の状況を認識。どう車を動かせば安全で効率的かを判断し、ハンドルやアクセル、ブレーキを操作する。歩行者のいない高速道路とは異なり、一般道ではより高度な予測や制御技術が求められる。

 ホンダは、本田技術研究所(埼玉、栃木)や、研究所傘下の「ホンダ・リサーチ・インスティチュート」(埼玉など)でAIや自動運転の研究を続けてきた。米グーグルなどIT企業も自動運転分野に参入しており、新拠点の設置で人材獲得競争に乗り出す。

 他の自動車会社もAI関連の技術を研究している。トヨタ自動車は1月、シリコンバレーに研究子会社を設立した。近く東京支部もつくる考えだ。日産自動車も、歩行者の行動予測などで海外の研究機関と共同研究を進めている。

 ■技術開発へ各社本腰

 自動車会社は自動ブレーキなどの「運転支援技術」を蓄積するが、これは人の運転が前提だ。今後、法律の変更やインフラ整備が進めば、自動運転の実現が現実味を帯びる。国は無人運転も視野に入れる。蓄積した技術の応用と同時に新技術の開発が必要になる。

 ただ、開発に欠かせないIT人材は、ネットや電機など他業界でも国内外で引っ張りだこだ。知名度がある自動車大手も人材獲得は容易ではない。トヨタ幹部は「最先端のAIの技術を使えるような人材は、なかなか自動車会社を就職先に選んでくれない」という。

 3月下旬、自動車大手が東京都内で自動運転分野で初の転職希望者向け説明会を開いた。トヨタ、ホンダ、日産と部品大手デンソーの技術者が自社をPR。説明会を主催した人材会社リクルートキャリアによると、各社から「自動運転の人材が是が非でも欲しい」と要望があったという。

 デンソーは3月、国内のAIコンテストにスポンサーとして参加。有馬浩二社長は「人材はしゃかりきに探していて、『タマゴ』がいるところには行くようにしている」という。

 (榊原謙、友田雄大)

《追記》
☆本田技研工業情報 「知能化技術研究開発を強化 〜知能化技術の研究開発を行う新拠点「HondaイノベーションラボTokyo」を開設〜」ここをクリック

asahi.com(2016-05-31)