ホンダ、北米でSUV増産 投資抑え既存設備活用

 ホンダは2017年から北米で売れ筋の多目的スポーツ車(SUV)を増産する。新工場の建設や生産ラインの増設といった大規模な投資を伴わずに、既存の工場での生産車種の入れ替えで対応する。世界戦略車に位置づける小型SUV「HR―V」の生産能力を現状より6割高める。機動的な生産再編で収益拡大を目指す。

 ホンダは米国、カナダ、メキシコの北米8工場で四輪車を生産する。北米全体で15年の販売台数は14年比4%増の185万台と過去最高だった。

 けん引役はSUVやピックアップトラック。これらを含む「ライトトラック部門」の米国での販売台数は15年に14年比1割近く増えた。一方でセダンなど「乗用車部門」は3%減った。10万台のラインの新設には200億円程度かかるとされる。ホンダは生産車種の入れ替えで、売れ筋車種の生産能力を拡大する。

 小型SUV「HR―V」の生産能力を15年比6割増の16万台程度に高める。現在はメキシコ第2工場(グアナファト州)で欧州向けも含めて年約10万台を生産しているが、17年初めをメドにメキシコ第1工場(ハリスコ州)をHR―Vの専用工場に切り替える。

 メキシコ第1工場は現在、主力SUV「CR―V」の専用工場。メキシコ第1工場でのCR―V生産分は、17年初めからセダンの主力車「シビック」専用の米国のインディアナ工場(インディアナ州)に移管する。50億〜60億円を投じてシビックの生産ラインの一部を改修し、CR―Vの生産量は維持する。

 排気量3500ccクラスの大型車を生産する米国アラバマ工場(アラバマ州)では、17年以降に高級SUV「アキュラMDX」の一部生産を別の工場に移して、ピックアップトラック「リッジライン」の増産に充てる。リッジラインは今年半ばに新型車を投入する。

 ホンダの米国販売は16年も過去最高を見込むが、世界全体では計80万台分の生産能力が余っている状況。日米欧での補完も強化し、新工場やラインの増設への設備投資は当面抑え「既存工場で需要の変化に柔軟に対応できるようにし、世界全体で稼働率を上げる」(役員)方針だ。

nikkei.com(2016-05-28)