おしゃれSUV人気 低燃費・街乗り意識


 ふつうの自動車より床が高く、オフロード走行を意識したデザインの「スポーツ用多目的車(SUV)」が人気だ。売れ筋は、1990年代にブームを巻き起こした三菱自動車「パジェロ」のような硬派な印象の大型車ではなく、おしゃれな外観で低燃費の「草食系小型SUV」だ。

 「新ジャンルのクロスオーバーとして投入 したい」。スズキの鈴木俊宏社長は今年1月の記者会見で、新型車「イグニス」をこう紹介した。

 「クロスオーバー」とは、悪路を走破するための頑丈な構造を持たないSUVのこと。最近は排気量1・5リットル、全長4・3メートル程度の小型クロスオーバーが人気だ。イグニスは排気量1・2リットル、全長3・7メートルとさらに小さい。簡易ハイブリッド車(HV)のみの設定で、ガソリン1リットル当たり28・8キロの低燃費を実現した。

 スズキはイグニスの投入で、小型SUV市場の成長を取り込みたい考えだ。2000年代の新車販売(軽を除く乗用車)に占めるSUV比率は5〜10%程度だったが、14年度は約15%に上昇。原動力は35%を占めた小型SUVで、前年度の18%から急増した。

 小型SUV人気に火を付けたのは、13年末にホンダが売り出した「ヴェゼル」だ。低燃費のHVが好評で、14、15年に国内で最も売れたSUVになった。マツダも15年2月に「CX―3」を発売。燃料費の安いディーゼル専用車で、燃費を気にする層に受けている。

 小型SUVは、オフロード車の雰囲気を取り込みつつも、小型乗用車の派生車という位置づけの車が目立つ。通常のSUVは、オフロード走行のために地面から車体の床までが20センチ以上あるのに対し、小型SUVは街乗りを意識し、20センチを下回る車種も多い。最近の小型SUVは、これまでの角張った印象の外観と異なり、流線形を多用したおしゃれないでたちで、女性の受けもいい。

 ■本格大型は「絶滅危惧種」

 SUVの販売は全般的に好調だが、日産自動車が15年に「エクストレイル」でHVを追加するなど、燃費性能重視の流れを無視できなくなっている。いまのSUV人気の源流になった大型の本格SUVには逆風だ。排気量が3リットルを超える車種が多く、「もはや日本では絶滅危惧種」(大手メーカー広報)。

 三菱は、本格SUVの代名詞とも言えるパジェロの新型車の開発は、海外で売る「パジェロスポーツ」の次期車を開発するときに検討する。相川哲郎社長は「各国の環境規制が厳しくなり、現状のパジェロの延長で次期車を開発しても生き残れない」。当面は中小型SUVの開発に注力する方針だ。(榊原謙、田中美保)

asahi.com(2016-03-09)