ホンダ、IoTでF1に雪辱 日本IBMのシステム採用

 自動車レースの最高峰フォーミュラ・ワン(F1)に再参戦したホンダの2年目が始まった。23日発表した2016年の運営体制では4月から本田技術研究所のトップがF1を統括する。英マクラーレンにエンジンを供給し、7年ぶりに復帰した15年はパワーユニットに故障が頻発した。日本IBMのデータ解析システムも本格活用するなどし、課題解決のスピードを上げる。

 22日、スペイン・バルセロナで開かれたF1全チームによる合同テスト走行。マクラーレン・ホンダの新型マシンを操ったジェンソン・バトン選手は「パワーの出具合は非常に良い。安定していた」と手応えを語った。初日はサーキットを84周し、走行距離は391キロメートルに達した。4日間合計で79周にとどまった15年からは格段に進歩した。

 パワーユニットの安定を支えるのはあらゆるものをインターネットでつなぐ「IoT」だ。車両に取り付けた150個前後のセンサーで集めるデータをIBMの最新システムで解析。リアルタイムで燃料の残量や故障の可能性を割り出す。

 解析結果はホンダのF1開発拠点「HRD Sakura」(栃木県さくら市)、英国のマクラーレンの研究拠点、サーキットの3カ所で共有。最適な給油のタイミングなどレース本番の戦略立案に役立てるほか、蓄積したデータをホンダはシーズン中のパワーユニット改善にも生かす。

 マクラーレン・ホンダがかつて表彰台を席巻した1990年前後と異なり、F1は環境技術重視に大きくかじを切った。排気量1600ccという小型車並みのエンジンで最高時速は300キロメートルを超え、100キログラムの燃料で90分以上走り続ける。

 表彰台に近づくためにはエンジン性能に加え、排ガスの熱を使って発電するモーターや電子制御ユニットなどを組み合わせるパワーユニットがカギを握る。「15年はシステムの信頼性が足りなかった」(ホンダ幹部)

 ホンダはF1プロジェクトの総責任者に3月1日付で02〜08年にF1のエンジンのシステム制御の開発責任者を務めた長谷川祐介氏を充てる。さらに4月1日付で松本宜之専務執行役員がF1担当となり、本田技術研究所の社長を兼務する。体制一新で臨む16年はまず15年にゼロだった予選のトップ10入りを目指す。

 米国や中国では好調が続くものの、タカタ製エアバッグのリコール問題などで国内の販売は振るわない。国内の販売店からは「ホンダらしいワクワクする車が減った」との声も漏れる。再挑戦2年目で表彰台を捉え、ファンの期待に応えられるか。IoTで磨きをかける開発力が試される。(工藤正晃、戸田健太郎)

《追記》
☆本田技研工業情報 「Honda フォーミュラ・ワン 2016年体制を発表」ここをクリック

nikkei.com(2016-02-23)