「受注、100機上回る」 ホンダジェット3機納入

 ホンダの航空子会社ホンダ・エアクラフト・カンパニーは19日、独自開発の小型ジェット機「ホンダジェット」の受注が100機を大きく上回っていると明らかにした。昨年末から引き渡しが始まっており、順調に滑り出している。

 藤野道格(みちまさ)社長(55)が朝日新聞などの取材に明かした。これまでに3機を顧客ログイン前の続きに納入。米国工場で年50機を造り、受注状況をみながら2018年にも生産を年100機程度にまで拡大するか検討する。

 ホンダジェットは主にビジネス用途で使われ、北米や欧州、ブラジルを主要市場としている。日本では受け入れ空港が少なく、投入未定だ。ビジネス用途の小型ジェット機は世界で年270機ほど売れており、今後は年300〜400機の市場になると見込む。

 ホンダジェットは7人乗りで、航続距離はロンドン―ローマ間を飛べる2185キロ。主翼の上にエンジンを置くことで、空気抵抗を減らし、エンジンを支える部品も減らせた。競合他社機より燃費は17%良く、室内空間は2割広くできたという。価格は450万ドル(約5億3千万円)。

■跳び起き、カレンダー裏に図描いた ホンダ・エアクラフトの藤野道格社長

 ホンダジェットのエンジンが主翼上につくことになった経緯について、藤野社長が語った。

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 主翼とエンジンという二つの空気の流れが干渉し、空気抵抗が増えるから「ダメだ」というのが昔からの常識でした。

 1996〜97年にプロジェクトが中断し、研究拠点の米国から日本に戻ったとき、30年代に書かれた流体力学の学術書を読み返しました。物体周辺の空気の流れを関数の組み合わせで表現する内容でした。

 ある夜、数式のことを考えながら布団に入ったんです。そのときイメージが湧いた。「空気の流れが干渉したとき、抵抗が一番少なくなるように翼やエンジンを設計、配置すれば」。すぐ跳び起きたのですが、紙がない。壁掛けカレンダーを破り、裏にイメージ図をスケッチしました。

 社内で「これならホンダがやる価値がある」と認めて頂き、開発が再開しました。米航空宇宙局(NASA)などの実験で理論通りの現象が確認され、「やっぱり」と思いました。(聞き手・榊原謙)

asahi.com(2016-01-20)