国内生産車種見直し ホンダや日産、北米向け余力確保

 日本の自動車メーカーが国内工場で生産車種の再編に乗り出している。ホンダは小型車「フィット」の北米向けを埼玉県の工場から三重県に移管。日産自動車は「ノート」の生産を福岡県から神奈川県に移す。生産体制の再編成に伴う余力を成長が続く北米市場向けの確保に振り向ける狙いだ。機動的な生産品目の入れ替えで低迷する国内販売を補い、国内工場の稼働率を高める。

 自動車メーカーは為替変動に左右されず、輸送費を抑える経営体制を整えるため、海外での現地生産を少しずつ進めてきた。直近は1ドル=110円台後半の円安で国内に生産設備を残す動きが広がる。ただ人口減に伴い国内販売が伸び悩んで生産余力が生じており、北米への輸出向けに振り向けて効率を高める。

 ホンダは2016年夏をめどに鈴鹿製作所(三重県鈴鹿市)で北米市場向け「フィット」の生産を始める。国内からの15年度の全輸出台数は8万台の見通し。このうち寄居工場(埼玉県寄居町)で生産する約4万台のフィットを鈴鹿製作所に移す計画だ。

 これとは別に狭山工場(埼玉県狭山市)では年内に中型セダン「アコード」のハイブリッド車(HV)を北米向けに生産し始める。国内3工場の生産再編に合わせて、輸出モデルを増やすことも検討する。

 日産自動車は16年8月をめどに主力小型車「ノート」の生産を日産自動車九州(福岡県苅田町)から追浜工場(神奈川県横須賀市)に移す。九州工場はフル稼働が続いており、ノートの移管で年間約10万台の生産余力を捻出し、北米向け多目的スポーツ車(SUV)「ローグ(日本名エクストレイル)」などの生産に振り向ける。

 ノートは12年に追浜工場から九州工場に生産を移していた。日本向け主力車の生産を再び追浜工場に戻し、九州工場の輸出拠点としての位置付けを明確にする。国内販売の伸び悩みで日産の15年度の国内生産は14年度とほぼ横ばいの約88万台にとどまる見込み。稼働率が低下する追浜工場を有効活用し、16年度の生産を103万台に増やす。

 トヨタ自動車も主力車「ヴィッツ」をグループ会社の豊田自動織機の愛知県の工場から宮城県の子会社に移す。17年にも移管を始め、19年をメドに終える方針だ。HV「プリウス」は愛知県刈谷市のトヨタ車体での生産を終了し、トヨタ本体の2工場にまとめる。移管による生産余力をミニバンや北米で好調なSUVの生産に充てる。

 一方、スズキも欧州向けなどの輸出増に柔軟に対応する。SUV「SX4」と中型セダン「キザシ」の相良工場(静岡県牧之原市)での生産を昨年中にとりやめる一方、浮いた生産能力を小型HV3種に振り向ける。まず今月売り出す新小型HV「イグニス」の生産を開始、欧州など世界各地に輸出する。

 景気回復やガソリン安を背景に米国は新車市場が拡大し、15年の販売台数は15年ぶりに過去最高を更新した。日本メーカーは米国で高水準の販売が続くとみているものの、現地ではメキシコなどで生産能力を増強している。これ以上の投資に踏み切るよりも、当面は国内工場を有効活用し、総コストを抑えながら北米販売を伸ばす。

nikkei.com(2016-01-19)