ホンダ、65歳に定年延長 国内全従業員4万人対象

 ホンダは30日、定年を現状の60歳から65歳に引き上げる方針を発表した。現状の再雇用制度よりも給与の削減幅を緩やかにしてシニア社員の労働意欲を高める。今後、少子高齢化で労働人口が減るうえ、厚生年金の支給時期も2025年までに現状の61歳から65歳に引き上げられる。労働力確保のため、定年延長に踏み切る動きが大手企業に広がりそうだ。

 ホンダの現制度では60歳で定年を迎えた後、定年時の50%の給与水準で最長5年間、再雇用している。新制度では定年時の平均80%の給与水準で、最長65歳まで定年時期を選べるようにする

 国内の全社員4万人が対象で、労働組合と協議の上、16年度中の導入を目指す。社員にとっては定年してから年金支給開始までの空白期間ができないため老後の生活の質を維持できるといった利点がある。

 現在の再雇用制度の利用者は全体の5〜6割程度。新制度導入で60歳以上で働く人材が増える見通し。海外駐在なども可能にして職場の選択肢を増やす。国内出張の日当廃止などで総人件費は現行と同じ程度に抑える。

 家族手当も見直す。これまでは専業主婦を含む1人目の扶養家族に対して月1万6千円を支給し、2人目からは1人当たり4800円を増額していた。今後は家族手当を段階的になくす代わりに、18歳までの子どもの育児手当、扶養する要介護者への介護手当を新設する。1人当たり2万円ずつを上限なしで支給する考えだ。

 定年引き上げで優秀な人材を確保する動きは業種を問わず広がってきている。ファミリーレストラン最大手のすかいらーくは15年9月、従業員の定年を60歳から65歳に延長することを決めた。野村証券も4月から個人向け営業を担当する一部社員の定年を65歳に延長し、65歳到達後は最長70歳まで再雇用する。大和ハウス工業とサントリーホールディングスも13年に65歳定年制を導入した。

 定年延長制度は人手不足に悩む中小企業が先行して取り入れてきた。多くの大企業が採用している再雇用制度では、嘱託職員やパートタイマーとして雇用するため給与水準が定年前に比べて半減する。このため働き手の意欲がそがれるという課題があった。

 清家篤・慶応義塾長は「定年と年金が接続するのが理想。日本の経済社会を持続可能にするには高齢者の就業は不可欠」と話している。


nikkei.com(2015-12-01)