日本で16番目の自動車メーカー誕生

日本エレクトライク、国交省の型式認定取得

 「自動車メーカー」に新たな1社が加わった。神奈川県川崎市発のベンチャー「日本エレクトライク」が8日、国の型式認定を取得したことが分かった。日本の自動車産業の一翼を担う可能性のある同社のクルマとは。


 日本で16番目の自動車メーカーが誕生した。

 国土交通省は8日、神奈川県川崎市の三輪EV(電気自動車)のベンチャー企業、日本エレクトライクに対し、自動車の量産のための型式認定を認める決定を出した。認定取得は自動車メーカーとしてのお墨付きが与えられることを意味する。

 これにより1996年に型式認定を受けた光岡自動車に続き、19年ぶりに自動車メーカーが誕生したことになる。同社の松波登社長は、15日午後に川崎市庁舎で福田紀彦市長とともに会見を開き、EV三輪自動車を披露する予定だ。

インドの三輪自動車を改造

 主力ブランドは社名と同じ名前の電動三輪自動車「エレクトライク」。インドの二輪大手バジャジ・オートのガソリン三輪自動車の車体を輸入して改造し、電動自動車に組み替える手法で量産する。

 既に今年2月からは富山県内の工場が稼働を始め、年間100台を生産目標としているが、今後はアジア諸国への展開も視野に入れているという。

 見た目はかつて日本中を走り回った「オート三輪」にそっくりだ。日本では戦後、ダイハツやマツダが三輪自動車を量産、1980年代までは市中を走り回る姿が見られた。だが、カーブで急ハンドルを切ったり、雨道でスリップしたりすると、簡単に横転。1980年代には軽自動車が台頭し、オート三輪は姿を消していった。

 ところがEVの時代を迎えれば、ラリードライバー出身の松波社長が2008年、次世代の自動車メーカー設立を目指して、日本エレクトライクを立ち上げた。松波社長は国内自動車メーカーのOBの技術者らを同社に登用。三輪自動車を復権すべく、改良を重ねていった。懸案の安定性に関しては、左右の後輪を別のモーターで駆動させ、曲がる時には回転差をつけるなどの工夫で解決した。

 「実験に実験を重ねて、絶対に倒れない三輪自動車をつくり上げた」と松波社長は自負する。



シートベルト不要

 エレクトライクには高性能小型バッテリーが搭載されている。家庭の電源から充電が可能で1回の充電で最大約60km走れる。航続距離を伸ばすためにエアコンは登載していない。

 車種の扱いは「側車付き軽自動車二輪」で、運転するには普通自動車免許が必要になる。ドアはないがシートベルトは不要で、二輪のようにヘルメットの着用義務もない。

 最高速度は約60km。1人乗りで荷台には最大150kgまで荷物を積む事ができる。デリバリーサービスや、EVの特性を生かし山間部など給油所の少ない場所での普及が見込まれる。

 エレクトライクは足回りもよく、普通自動車の運転に自信のない女性や、高齢者にも手軽に乗りこなせそうだ。

 かつての懐かしい昭和の風景が、再び路上で見られる日も近いかもしれない。

nikkeibp.co.jp(2015-06-09)