インド小型車競争激化 ホンダ・ルノー新車攻勢

タタなど現地勢、中間層開拓

 インド乗用車市場で小型車の競争が激化している。ホンダは8日に現地で新型「ジャズ(日本名フィット)」を発表した。経済成長にともない、消費者が同じ小型車でも少し大きめの車を求め始めたことに対応する。インドは世界でも数少ない成長市場。インド首位のマルチ・スズキのほか、世界の自動車メーカーがしのぎを削る中、急成長するホンダの攻めがどこまで通用するか。

 「この車で、インドの若い人々を『ホンダ好き』にしたい」。ホンダが8日にニューデリーのホテルで開いた小型ハッチバック車「ジャズ」の第3世代モデルの記者会見で、ホンダのインド四輪法人の井上勝史社長はこう呼びかけた。

 すでに日本などで第3世代フィットは発売済みだが、今回のインド投入では、1200ccなど日本より排気量の小さなエンジンを搭載。機能や外観も「インド仕様」に変えた。一方で部品の現地調達比率は95%で、価格を53万ルピー(約100万円)からに抑えた。燃費効率はこのクラスではインドで最高水準だ。

 ホンダはインドで異例の新車ラッシュに乗り出している。13年4月にセダン「アメイズ」(代表車種の排気量1200cc)を発売したのを皮切りに、14年1月にセダン「シティ」(同1500cc)、14年7月にはミニバン「モビリオ」(同1500cc)を相次いでインド市場に投入。12年度(12年4月〜13年3月)に2.7%だった乗用車市場のシェアは14年度に7.3%に跳ね上がった。

 度重なる品質問題に苦しんだホンダは八郷隆弘社長のもとで量を追わない方針だが、インドは例外のようだ。「インドはすでに世界で最も重要な市場の一つだ。アジア戦略のなかで、最終的な主戦場はインドだと思っている」。ジャズの発表にあわせインドを訪問したホンダのアジア・大洋州本部長の安部典明執行役員はこう言い切る。

 ホンダの狙いは排気量1200〜1500ccという小型車でも従来のボリュームゾーンに比べ少し大きめの市場。ここにセダン、ミニバン、そして今回のハッチバックの新車を投入し、多様化するインドの新車需要を取り込む考え。13年以降のインドへの投資額は300億ルピー。インド国内2カ所の工場はフル稼働で、16年までに工場の生産能力を拡大し、年30万台の生産体制を整える。

 インド乗用車市場はシェアが45%に達するスズキ子会社マルチ・スズキが圧倒的に強く、2位の現代自動車のシェアも高い。これにタタ自動車、マヒンドラ・アンド・マヒンドラ(M&M)の現地勢が続く図式だったが、ホンダが変えた。

 ホンダに続けとばかりに動き出したのが米フォード・モーターだ。今春に西部グジャラート州に新たな車両工場を開設し、インドでの生産能力は従来の2倍強の44万台となった。これにあわせ、今後12カ月内に1200cc級のセダンなど3車種を投入する。

 仏ルノーは今年後半に初めてインドの小型車市場に参入する。積極的な販売投資もあわせ、提携先の日産自動車とあわせても今は5%未満のシェアを10%とする目標を掲げる。同社のカルロス・ゴーン最高経営責任者(CEO)は新たに投入する小型車について「インドを征服する車になる」と公言している。

 一方、3〜4位の常連だった現地勢も防戦に必死だ。12年度には11.7%だったシェアがほぼ半減しているタタ自動車は中間所得層の若者を狙ったセダン、ハッチバックを昨年から投入。M&Mは足元で前年割れの販売実績が続くが、年内に自社で初めてとなる小型SUV2車種を投入するなどで巻き返しを狙う。

nikkei.com(2015-07-09)