ホンダ「S660」工場を公開 1日48台、半年待ち


 ホンダは26日、4月に売り出した軽自動車のオープンカー「S660」の工場を報道陣に公開した。いま注文しても納車まで半年待ちという人気に応えるため、昼休み返上や残業で1日の生産台数を計画より2割増やした。それでも手作業が多いため、48台しかつくれないという。

 生産を受け持つのは子会社八千代工業の四日市製作所(三重県四日市市)。八千代の笹本裕詞社長は「さらなる増産は部品の調達増なども必要で簡単ではない。一気に生産を増やすのではなく、いい車を長くつくるのも重要」と話す。

 S660のような趣味性の高い車は、長く安定的に売れるわけではなく、初期投資を抑えたいのがメーカーの本音。八千代では、通常はロボットに任せる部品の溶接工程に手作業を多く採り入れ、大規模な設備投資をしないで済むようにした。車体組み立ても、既存の軽トラックやバンのラインを使っている。

 笹本社長は「こうした台数が少ない車種をつくる技術は、今後アフリカなど販売が少ない地域での生産にもいかせる」と話す。

 八千代はリーマン・ショック後の業績悪化で、2012年1月には人員削減のための早期退職を募集した。本告次男専務は「(いまの)雇用は守っていきたい。八千代にしかつくれない車をホンダと一緒につくっていく」と話した。
(榊原謙)

asahi.com(2015-05-26)