F1 強いホンダ再現期待

 自動車レースの最高峰、F1世界選手権が3月、豪州GPで開幕する。

 全20戦で行われる今季、ホンダが1980年代に黄金期を築いたマクラーレンと再びタッグを組んで復帰する。「強いホンダ」の再現へ、モータースポーツファンは期待を高めている。

 排気量の小型化や、低燃費化の新ルールが導入された2014年シーズンは、パワーユニット(PU、エンジンと周辺システム)の完成度でメルセデスが他チームを圧倒した。

 マクラーレンのロン・デニスCEOは「強豪は1年先を行っている。我々の挑戦は大きなものだ」と、現状を決して楽観視はしていない。その上で、ホンダ側のF1プロジェクト総責任者、新井康久・本田技術研究所専務執行役員は「トップのメルセデスと対等のところに目標を置かないと意味がない。そこに向かっている」と強調する。

 2月上旬にスペインで行われた最初の合同テストでは、ホンダの開発したPUが他チームよりコンパクトなことが、ライバルたちの注目を集めた。新井氏は「見えるところも見えないところも工夫している。期待してください」と笑みを浮かべて自信をのぞかせた。

 しかし、テストの4日間で走った周回数は79にとどまり、参加8チーム中最も少なかった。コンパクトなため、こもった熱を逃がす部分に若干の問題が生じたという。新井氏は「初めて(PUを)マクラーレン(の車体)と合わせたわけで、色々なことが起きる。マシン全体、PUとしてのトラブルではない。(研究所で)もう一度作り上げている」と、改善を誓う。

 関係者は「まずは開幕戦でいいレースをしたい」と、口をそろえる。デニスCEOは「まずは1勝。近い将来のどこかで、総合王座を狙いたい」と話す。ドライバーも2005、06年王者のフェルナンド・アロンソ(スペイン)、09年王者のジェンソン・バトン(英)をそろえた。経験豊富なドライバーはPU開発にも重要な役割を果たす。潜在能力では上位チームと肩を並べるだろう。

 アロンソは「最高レベルのチームで仕事ができることに興奮している。最善を尽くしたい」と語り、バトンも「80年代、憧れて見ていたチーム。その新しい時代の一員になれてうれしい。開幕戦には準備万端で臨みたい」と意欲を見せた。


 メルセデス、優位動かず

 マクラーレン・ホンダのライバルたちの動向を見てみよう。新ルールが導入された昨季、19戦16勝と圧倒的な強さを見せつけたメルセデスは、今季も安定したシーズンを送りそうだ。2季連続で製造者、ドライバー両部門制覇も視野に入る。

 4日間に8チームが参加した最初の合同テストで、メルセデスは、そのなかでも最多となる計516周を走破した。

 昨季、ハミルトンとロズベルクの2人で計5度のリタイアがあり、マシンの信頼性の向上を最大の課題としている。まずは多く走り込んで問題点を洗い出すのが最大の目的だった。ロイター通信によると、ハミルトンは「今は速いタイムよりも周回を重ねることが最優先」と語っている。開幕へ向け、計画通りとみていいだろう。

 レッドブル・ルノーは昨季、メルセデスが席巻するなか、リチャルドが3勝。メルセデスを追う一番手となりそうだ。今回のテストではトラブルが続き、計166周と8チーム中7番目という少なさだったが、同じルノーのPUを積むトロロッソは着実に周回を重ねており、残り約1か月での改善に期待できそうだ。

 昨季、製造者部門で4位に低迷したフェラーリは、雪辱を期す。2010年からドライバー部門で4連覇を達成したフェテルが加入。マシン開発もおおむね順調のようで、テストではライコネンが最速のラップタイムをマークし、フェテルが僅差で2位に続くなど好調だった。

 ドライバー部門では、昨季11レースを制したハミルトンが最有力で、5レースに勝ったロズベルクが続きそう。リチャルドのほか、マシン次第ではあるが、アロンソやフェテルも面白い存在だ。17歳のフェルスタッペンや20歳のクビアトら若手も注目される。(運動部 野崎尉)

yomiuri.co.jp(2015-03-02)