ヤマハ発、欧州で四輪車生産・販売 19年めど工場

2人乗り、二輪技術生かす

 二輪車世界2位のヤマハ発動機は2019年をメドに欧州で四輪車事業を始める。数百億円を投じて専用工場を建て、2人乗りの車を製造・販売する。低燃費の小型車は生活の足として世界で需要が高まっており、二輪車の開発ノウハウが生かせる。小型車の普及が進んでいる欧州市場で参入する。日本企業で9社目の乗用車メーカーが誕生する。

 柳弘之社長が26日、日本経済新聞の取材で表明した。かねて四輪車への参入方針を示していたが、具体的な事業計画を明らかにしたのは初めて。エンジンから四輪車を一貫生産する日本のメーカーは、同じく二輪車から1963年に参入したホンダ以来になる。

 ヤマハ発が欧州で製造・販売するのは市街地での近距離利用などを想定した小型車。エンジンの排気量が1000ccのガソリン車と電気自動車をそろえる。小回りが利き、運転手との一体感がある二輪車の設計ノウハウを取り入れる。「小型車に合った街づくりが進んでいる」とみて、まず欧州で発売する。

 エンジンは自社で開発・製造し、電気自動車の動力源であるモーターや電池は外部から調達する考えだ。今後、工場の建設地や生産規模などの検討に入る。

 ヤマハ発は四輪車用エンジンの開発・生産で1964年からトヨタ自動車と協力関係にあり、エンジンの製造技術を持っている。これまでに300万基以上をトヨタなどに供給した実績があり、現在もトヨタの高級車ブランド「レクサス」に納入している。トヨタはヤマハ発に3.6%を出資している。

 調査会社のIHSオートモーティブは21年までに世界の自動車生産が年2100万台増えるとの予測の中で、小型車はその4割強を占め、新興国の需要も合わせて全体の伸びをけん引するとみている。

 欧州の主要18カ国では13年の新車販売台数の4割をすでに小型車が占めている。2人乗りでは独ダイムラーが「スマート」(独での税込み価格は約1万2000ユーロ=約160万円)を販売中。ヤマハ発が発売する車は独フォルクスワーゲン(VW)の「up!」などの小型車とも競合する見通しだ。

 ヤマハ発は13年の東京モーターショーで四輪車の試作車を一般公開し、事業化の可能性を探ってきた。「四輪車の市場は多様になっており商機がある」(柳社長)と、主力の二輪車や船舶事業に続く新たな柱に育てる。

nikkei.com(2015-02-27)