世界自動車ブランド、トヨタが首位 ホンダは4位
アウディ、VW追い上げ

 最もブランド力の高い自動車メーカーは今回もトヨタだった。米ブランドコンサルティング大手のインターブランドが発表した最新の世界ブランドランキングトップ100でトヨタは11年連続で自動車業界トップとなった。しかし、アウディやフォルクスワーゲン、日産自動車の3社がいわば「大躍進トリオ」を構成し、猛烈なチャージで世界の自動車ブランド勢力図を混沌とさせている。

 最新のランキングについて、インターブランドのグローバル最高経営責任者(CEO)、ジェズ・フランプトン氏は「全般的にみて、自動車業界はかなり高い評価を得た」と評した。

 フランプトン氏はさらに、自動車メーカーはおしなべて「これからは強いブランド力の構築が必要という認識をしっかりもっている」と続けた。「モビリティー新時代で勝ち組を目指すなら、これまでとは少し違う方法で(自社ブランドの)立ち位置を調整しなければならない。このため、自動車メーカーのブランドのつくり方は以前よりずっと洗練されている」という。

■トヨタ、「ワクワク感」演出が奏功

 トヨタは再び、業界トップに輝いた。全体ではアップル、グーグル、コカ・コーラに続いて8位で、昨年の10位から順位を上げた。インターブランドによると、「たくさん出かけよう(Let’s go places)」や「楽しさ、自分流(Go fun yourself)」といったキャンペーン広告も一役買っているという。

 「伝統的にトヨタはかちっとした信頼の高いブランドイメージが根付いていて、個性よりは品質の高さで知られてきたが、今回のトヨタのキャンペーンは明らかに、もっとワクワクして遊び心あふれるイメージを加えるようにデザインされている」とニューヨークが拠点のインターブランドは解説する。実際、ブランド全体に「ワクワク感」をもたせ、同時に製品自体や新車発表のペースにも「ワクワクした感じ」を反映させていくことは、トヨタ社長で創業者の孫、豊田章男氏の最優先課題である。

 トヨタは従業員の多様性から移動通信技術、新型燃料電池車を含む次世代のパワートレイン(エンジンの動力を車輪に伝える装置)にいたる分野でも、進捗をみせている。

 フランプトン氏は特にアウディを評価した。ブランド価値は27%上昇して98億3千万ドル。2013年の51位から今回は45位に順位を上げ、自動車業界全体を引き上げる存在となった。

 「アウディは販売店でデジタル機器を活用するなどして、顧客やアウディ愛用者の関心を強くつかんでいる」とフランプトン氏は語った。そうした(販促の)場はショッピングモールにもひろがっているという。「アウディの手法は自動車業界では突出している。コンフィギュレーター(注:正確な製品構成を構築するために、制約条件を盛り込むツール)をウェブサイトに搭載しているだけではない。我々が消費者として(クルマで)体験したいことは、場所や一緒にいる相手、何をしているかなどで異なるということを、アウディは分かっている。顧客がどうやってクルマを買うかということに対する意識レベルが高い」

 一方、アウディが系列に属するフォルクスワーゲンも、「大躍進トリオ」のひとつ。ブランド価値の評価は23%上昇して、137億2千万ドルとなり、順位は前回より3つ上がって31位だった。

 フランプトン氏は「フォルクスワーゲンは環境に配慮した製品づくり(green credential)に取り組んできた」と説明した。インターブランドは、フォルクスワーゲンによる持続可能性を追求する「Think Blue戦略」とともに、同社が今年、米国を含むその他地域では低調だったが中国では好調だったことなどを取り上げた。

 日産も自動車ブランドの中で大きく評価を伸ばしたメーカーのひとつ。ブランド価値は23%上昇し、76億2千万ドルとなった。全体での順位は前回の65位から56位に上がった。

 「日産は電気自動車の分野で革新的な技術を持ち業界をけん引している。実際に路上を走る電気自動車の台数は同社製が最も多く、自動運転技術にも真剣に取り組んでいる」とフランプトン氏は評する。

 業界全体をみて、フランプトン氏はこのように話す。「車種ごとの違いはどんどん小さくなっており、自動車ビジネスで他社と差をつけられるのは、ブランド戦略だ。つまり、クルマの持ち主、利用者にとってどんな価値があるか、仲間や他人に、自分がそのクルマを運転しているとどんな印象を与えられるか、といったことだ」

 インターブランドのランキング上位にきた自動車メーカー各社の所見は以下の通り。

■メルセデス・ベンツ  10位。新型車と新しいブランド表現で、ブランドイメージを刷新した。「消費者が同社のブランドに期待する乗り心地と性能の良さ、安全性を保ちながら、同時に印象的なスタイルと革新的な新しい機能も提供しており、メルセデス・ベンツが今も顧客を引き寄せるのは当然だ」

■BMW

 11位。「プレミアムブランドの地位の構築に成功する一方で、持続可能なクルマづくりも前進させている」。具体的には、新型の電気自動車「i3」や米の電気自動車、テスラに対抗するプラグインハイブリッド車「i8」をインターブランドは挙げた。また、ここ数年は集中的なブランド戦略や内部の透明性、外から見たブランドの一貫性がすべてBMWの成功につながっている。

■ホンダ

 20位。同社ブランドは世界の様々な市場での「ふさわしい製品づくりと反応の良さの向上」を目指している。このため「それぞれの地域仕様の製品をより迅速につくり上げる」とともに、ダッシュボード関連技術でグーグルやアップルと組んでいる。しかしホンダは最近、「リコールに足を引っ張られている」。「同社の製品戦略は競合他社ほど独自性や反応の良さを感じられないともいえるだろう」

■フォード

 39位。フォードは「常勝ブランド」。同社の「フォーカス」は世界で最も売れたクルマであり、「Fシリーズ」は最も売れている米国車。中国での販売は50%近く増加と目覚ましい。「新型マスタングを世界各国で発売することで」フォードはさらに前進しようとしている。同社は持続可能なクルマづくりという面でも優れており、インターブランドが環境イメージと環境活動の実態を総合評価したランキング「ベストグローバルグリーンブランド2014」では、トヨタを上回った。

■ヒュンダイ

 40位。「モダンプレミアムというブランド方針をうまく実現している」とインターブランドは指摘。具体的には新車「ジェネシス」や「ソナタ」といった車種を挙げた。また、ブラジル向けの「HB20」といったように、各国の市場に合わせてカスタマイズする世界戦略も取り上げている。
By Dale Buss, Contributor
(2014年10月16日 Forbes.com)

nikkei.com(2014-10-23)