ホンダ、人気車の納期短く 在庫リスクは販売店に

 ホンダは系列の自動車販売店との取引条件を見直す。店が在庫リスクを負うかわり、数カ月待ちのケースもあった人気車種を最短2〜3週間で納車できるようにする。ホンダは国内で100万台の販売体制をめざしている。自動車参入から約50年続けた取引手法を転換、販売店のマーケティング力を引き出す。

 ホンダは約2200の販売店を持つ。まず資金力のある大型店で導入、2〜3年かけ取引条件を順次見直す。売れ筋をホンダが判断して見込み生産していた従来の手法に代え、販売店の計画に基づく生産を重視する。

 新しい制度では販売店が2〜3カ月先まで販売計画や販促策を策定。それに基づきホンダに発注する。新車は工場を出た時点で発注した店の在庫になる。従来はホンダ自身が新車の在庫を保有する取り決めだった。

 ホンダの主力販売車種は30前後。80前後のトヨタ自動車や40前後の日産自動車に比べて少なく、特定の車種に人気が集中する傾向がある。今も軽自動車と小型車「フィット」などで約8割を占める。販売店が発注しても在庫がないと、人気車種は納車まで何カ月もかかるケースがあった。

 販売店が顧客層や地域の特徴を見極め、売れ筋の在庫を的確に確保できれば、顧客に車を届ける期間を短くできる。ホンダは登録手続きなどを含めて最低必要な「2〜3週間で納車できるようにしたい」という。

 ホンダは国内で年100万台規模を安定して売る体制をめざし「N―BOX(エヌボックス)」など人気の高い軽自動車の品ぞろえを拡充してきた。販売店が在庫を持つ体制にして売り逃しを防ぎ販売を底上げする。

 取引条件を見直すのは、販売店のリスクが小さい従来の取引が「販売活動を鈍らせている面がある」(国内事業幹部)とみているためだ。一部の販売店で先行して取り組んだところ、売り上げ実績が伸びるなどの成果が出ているもよう。

 新制度では販売店は在庫リスクを抱える。ホンダは的確な仕入れや販売戦略を立てられるよう支援を強化する。全国に31社ある連結対象の販売子会社に支援部門を設け、担当者が販売店と相談しながら戦略を練るようにする。既に31社のうち7社で活動を始めた。

 トヨタや日産など国内大手はこうした取引条件を既に採用している。ホンダは1960年代に後発として四輪車に進出。零細な二輪車販売店からの転業組も多かったため、経営リスクが小さい独自の手法を続けてきた。

 トヨタや日産に比べ遅れていた販売店との取引条件の見直しにホンダが踏み切ったことで、今後はヒット商品を生むメーカーの開発力に加え、リスクを取って売上高を伸ばす販売店がどれだけ増えるかが焦点になる。

nikkei.com(2014-07-10)