国内自動車8社で新エンジン、欧州勢対抗へ研究

 トヨタ自動車やホンダなど国内自動車8社は共同で、環境負荷が少ない自動車用エンジンの基礎研究に乗り出す。ディーゼルエンジンの二酸化炭素(CO2)排出量を2020年までに10年比3割減らす燃焼技術などを開発し、成果は各社がガソリン車も含めて実用化する。国際競争には燃費改善につながるエンジンの革新が欠かせない。大学などとも連携し、環境性能で競合する欧州勢に対抗する。

 東京大学や早稲田大学とも協力する。自動車への環境規制の強化は世界的な流れで電気自動車(EV)などの需要も拡大するが、エンジンは当面、動力源の主役であり続ける。20年の段階でも、世界で造る車の9割以上がエンジン車という予測もある。国内各社は基礎研究の成果をそれぞれのエンジン開発に生かす体制で国際競争に臨む。

 共同研究に参画するのはトヨタ、ホンダ、日産自動車、スズキ、マツダ、三菱自動車、ダイハツ工業、富士重工業。国内の乗用車メーカー8社すべてがそろう。技術者と資金を出し合い「自動車用内燃機関技術研究組合」を設立し、理事長にはホンダ子会社の本田技術研究所の大津啓司常務執行役員が就いた。

 各社は単独では取り組みにくい高度な技術課題としてディーゼルエンジンを選んだ。同組合を通じ、大学の研究室に技術者を派遣する。実務経験を持つ技術者と大学の研究者が共同で基盤技術の開発にあたる。ディーゼルが出す白煙の低減や排ガスからススを取り除く触媒装置のシミュレーション技術などを研究テーマとして検討する。

 研究プロジェクトに投じる資金は14年度からの3年分だけで20億円規模に達する可能性がある。初年度は3分の2を国の補助金で賄う。各社は研究成果をそれぞれのエンジン開発に生かす。この段階では、エンジンの最終的な性能や完成時期を競い合う関係になる。研究成果はガソリンエンジンの改良にも活用する。

 日本車メーカーは低公害・低燃費エンジンで長く優位を保ってきた。ただしBMWやフォルクスワーゲン(VW)などドイツ勢の猛追を受け、ディーゼルでは先行を許したとの見方が強い。

 マツダがエンジンなどの低燃費技術「スカイアクティブ」を開発するなど、日本メーカーは独自にエンジン開発を手がけてきた。競争環境の変化を受け、基礎研究での協力を通じ、業界のエンジン技術を底上げする。

 世界の自動車業界は中国市場の伸びや北米市場の回復を受け、日欧米韓の有力メーカーの主導権争いが激しくなっている。新興国市場では価格が高めのハイブリッド車(HV)や充電インフラが必要なEVの普及には時間がかかるもよう。エンジンの技術革新は成長市場の開拓に欠かせない。

 国内では環境分野を中心に、競合する車メーカーが足並みをそろえる動きが出てきている。トヨタ、日産、三菱自、ホンダの4社は国内でEVやプラグインハイブリッド車(PHV)の普及をめざし、充電インフラ整備を担う新会社を共同出資で近く設立する。

nikkei.com(2014-05-18)