ホンダ、フィットを全3工場で生産 異例の体制で納車急ぐ

 ホンダは主力小型車「フィット」の生産を国内に3つある完成車工場に広げる。5月から6月にかけて埼玉県狭山市の工場で量産を始め、国内の総生産台数を1日当たり1200台前後と約2割増やす。燃費性能の良さなどから幅広い層に売れており、一部で購入者に届ける納期が長くなっている。消費増税で国内市場の縮小が見込まれるなか、同じ車種を3工場で並行して生産する異例の体制にして好調な販売を後押しする。

 新たに生産するのは埼玉製作所の狭山工場。同工場は異なる車種を交ぜて効率よく生産できる仕組みを整えている。生産能力に余裕があるため、フィットの売れ筋であるハイブリッド車(HV、約170万円から)を加える。設備投資は小規模にとどめる。

 従来は埼玉製作所の寄居工場(埼玉県寄居町)と鈴鹿製作所(三重県鈴鹿市)でフィットを生産してきた。狭山工場での生産規模は時期により変わるが、1日200台前後の見込み。ホンダが国内に単独で持つ完成車の全工場でつくることになり、国内生産の3割程度がフィットになるとみられる。

 フィットは2013年9月に全面改良。ガソリン1リットル当たり36.4キロとHVタイプでは国内トップクラスの燃費性能を実現し、14年3月までの半年間、毎月の車名別国内販売でほぼ一貫して首位を維持している。

 都市部では子育てを終えた世代の購入が目立つほか、地方では生活の足としてファミリー層などにも人気。増税後も安定した売れ行きが期待できるとみているもようだ。

 2月のリコール(無償回収・修理)で生産を絞ったこともあり、一部で納期が夏にずれ込んでいるとみられる。トヨタ自動車の小型HV「アクア」や日産自動車の「ノート」と競合しており、納期が長いと消費者に敬遠される恐れがあるため増産で売りやすくする。

 ホンダの13年度の国内販売実績は12年度比で18%増の約84万8400台。14年度は初の100万台乗せを目指している。消費増税で先行き不透明感もあるが、人気の高い車種の販売を生産面で後押しすることで目標達成に弾みを付ける。

 フィットの生産で狭山工場の稼働率が上がり、3工場そろってほぼフル稼働となる見通し。同社のグローバル戦略では消費地に近い場所で生産する方針。国内の工場や雇用を維持するには、国内販売を失速させない取り組みが欠かせなくなっている。

nikkei.com(2014-04-25)