ホンダ、時速60キロでも衝突回避 対人自動ブレーキ

 自動車大手が歩行者を対象とした自動ブレーキの普及を急ぎ始めた。ホンダは世界で初めて時速60キロメートルで走行していても止まることができる技術を開発した。従来比で倍の速度でも回避できる。トヨタ自動車は2015年をめどに量販車での採用を目指す。安全性を高めて優位に立つ狙いで、国内外の有力メーカーがしのぎを削る自動運転車の開発にも応用する。

 自動ブレーキはレーダーやカメラで障害物をとらえてスピードを落としたり、直前で止まったりする仕組み。衝突事故の被害を軽減できるとして自動車を検知する自動ブレーキはこれまでも使われてきたが、最近、欧州や日本でニーズが高まっているのが、歩行者を識別できる自動ブレーキだ。「安全」を巡る自動車各社の技術開発競争が激しくなっている。

 ホンダが開発した自動ブレーキは、歩行者を検知する高精度システムを備えている。ミリ波レーダーと高画質カメラを使い、より早い段階から正確に歩行者を判別し、ブレーキを作動させる。衝突を回避できる速度は時速60キロと競合他社のおよそ2倍の速さにして巻き返す。年内に国内発売の高級セダン「レジェンド」で採用されるもようで世界戦略車でも使えるようにする。価格は未定。

 トヨタは高級セダン「レクサスLS」に導入している時速40キロメートルで動く自動ブレーキをベースに、15年めどに量販車向けの新システムを開発する。現在、他の安全機能と合わせて約100万円する価格を引き下げ、自動ブレーキだけで10万円以下で実用化する。10年代後半には回避できる速度を時速70キロメートルに上げる。

 富士重工業も衝突回避の速度を時速50キロメートルに高めた新型の自動ブレーキ「アイサイト」を、5月発売のスポーツワゴン「レヴォーグ」に採用する。オプションで選べるようにする方針で、価格は10万円程度の見込み。

 歩行者向け自動ブレーキの開発が相次ぐ背景には、必要な部品の価格が下がったことが大きい。人を検知する画像処理プロセッサー(演算処理装置)の価格は2年前の4分の1程度に下落した。各社は天候など条件で作動にムラがないように改良しコスト削減を急ぐ。

 国内外の有力メーカーは、20年までに自動運転車の技術を実用化しようとしており、自動ブレーキの技術改良が開発に役立つとみている。

nikkei.com(2014-01-22)