国内最後の乗用車工場? ホンダ、埼玉で生産開始

 【豊岡亮、木村裕明】ホンダが建設を進めてきた埼玉製作所寄居工場(埼玉県寄居町)が9日、生産を始めた。自動車業界では、日本の自動車メーカーが国内につくる最後の乗用車工場ともいわれる。各社が海外に生産をシフトする動きは変わりそうにない。

 新工場は9月に発売予定の主力の新型フィットやミニバンのフリードをつくる小型車の専用工場になる。エンジンを生産する小川工場(同県小川町)から約2キロの場所に立地し、年産能力は25万台で、省エネにも配慮した最新鋭工場だ。

 ホンダが、国内に小型車の専用工場をつくるのは、国内市場が小型車中心になっているためだ。

 国内で完成車工場が稼働を始めるのは、2011年1月に宮城県大衡村のトヨタ自動車子会社のセントラル自動車(現トヨタ自動車東日本)の工場が稼働して以来約2年半ぶり。

 00年代以降に稼働を始めた完成車工場は、ほかにダイハツ工業子会社・ダイハツ九州の中津工場(大分県中津市)しかない。

 自動車業界では、海外に生産を移していく動きが続いている。

 日本の自動車各社は長く続いた1ドル=70円台の超円高時代に、為替の変動に左右されにくい生産体制をつくるため、海外への生産移管を進めてきた。ホンダは昨年9月に北米向けの主力のスポーツ用多目的車「CR―V」の生産を狭山工場(埼玉県狭山市)から米国の工場に移した。ホンダはピーク時の02年に約138万台を国内で生産していたが、昨年は102万台まで下がった。

 他社も同様だ。トヨタ自動車はピーク時の07年に国内生産が422万台あったが、昨年は349万台。日産自動車も80年に264万台あったが、昨年は114万台まで減った。

 一方で、海外生産は拡大している。米国などでの現地生産が1990年代以降に拡大してきたことに加え、今後の需要の拡大が見込まれる新興国に生産拠点を移す動きが止まらないからだ。国内生産の総台数は90年(1348万台)をピークに減少傾向にあり、07年に海外生産の総台数と逆転。12年には、国内生産の994万台に対し、海外生産は1582万台に上り、差は拡大するばかりだ。

 業界ではこうした流れは今後も続くとの見方が支配的で、寄居工場が「最後の新工場」になる可能性は十分にある。

《追記》
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asahi.com(2013-07-10)