燃料電池車を普及させるには  <<日本経済新聞 社説>>

 ホンダと米ゼネラル・モーターズ(GM)が次世代エコカーの燃料電池車の共同開発を決めた。燃料電池車をめぐってはトヨタ自動車や日産自動車も海外メーカーと開発で提携しており、実用化へ向けた競争が激しくなりそうだ。政府は普及のために必要な規制緩和を進めてほしい。

 燃料電池車は燃料にあたる水素を酸素と反応させて電気をつくり、モーターを回して走る。排ガスを出さない点は電気自動車(EV)と同じだが、1回の水素の充填で走れる距離は約500キロメートルとEVの約2倍ある。充填時間も3分程度とEVに比べ大幅に少なくて済む。

 巨額の開発費を分担するため国際的な提携が進んでいる。トヨタは独BMW、日産は独ダイムラー、米フォード・モーターと組む。今回のホンダ、GMの提携で、大きく3グループに分かれて開発が進む構図が固まった。

 燃料電池車は走行時に温暖化ガスを出さないので、環境面で重要性が増している。日本の電力供給に不安があることも考えれば、ハイブリッド車やEV以外にも選択肢が広がるのは望ましい。

 燃料電池車の製造コストは以前、1台1億円といわれたが、500万円程度に抑えることも視野に入ってきたとされる。各メーカーは競争を通じて技術を磨き、価格の引き下げを進めてほしい。

 普及のため自動車メーカーや石油会社などは、水素を充填する施設を建設する計画だ。だが現在は、高圧ガスの取り扱いや設備に使える鋼材などで規制が多い。政府は成長戦略に、水素の供給インフラ整備に必要な規制の見直しを盛り込んだ。具体化を求めたい。

 燃料電池車の購入や水素充填施設の建設に、政府の補助金を求める声が広がる可能性もあろう。財政事情の厳しさや、民間による競争を促す点から、国の資金支援はできるだけ慎重に考えたい。充填施設の建設費を引き下げるための新技術を生み出すなど、企業が知恵を絞ることも必要になる。

nikkei.com(2013-07-05)