ホンダ、燃料電池車加速 GM提携で費用分担

 ホンダと米ゼネラル・モーターズ(GM)が燃料電池車(FCV)の技術開発で提携した。FCVの巨額な開発費の負担を減らし、市販車の開発を加速させる。海外メーカーとすでに連携するトヨタ自動車や日産自動車の陣営に対抗する。

 2日午前(日本時間同日夜)、両社がニューヨーク市で発表した。FCVに搭載する電池や燃料となる水素を車に積むシステムなど基幹部品を共同で開発していく。2020年ごろを目標に実用化させるという。

 会見したホンダの岩村哲夫副社長は「ホンダは生産技術に自信があり、GMは先進的な素材に知識が深い。力を合わせると、自前で取り組む以上のことができる」。GMのガースキー副会長は「両社はFCVの分野で世界のリーダー。他社にできないことが達成できる」と強調した。

 ホンダはまず、独自技術の新型車を15年から日本や欧米で順次発売する。その先のモデル向けの開発を共同で進める。GMの計画は現時点で未定としている。

 FCVの量産・普及の最大の課題は、巨額の開発コストの引き下げだ。低価格の市販車を量産するまでには大きな費用がかかる。このため両社は負担を分かち合い、部品の調達コストを引き下げることなどを狙う。FCVの基幹となるシステムを共同開発して両社の車に載せたい考えだ。

 米カリフォルニア州が自動車各社に対し、州内で売る車の一定割合を、環境負荷が低いEVやFCVなどにするよう義務づけた。こうした規制が広がる可能性があり、両社は技術を持ち寄って開発を急ぐ必要があると判断した。(ニューヨーク=畑中徹)

 ■世界の勢力図、固まる

 FCVの開発では、国境をまたいだ提携が広がる。ホンダとGMの提携で、日本の大手3社を軸にした連合が出そろう。「究極のエコカー」と呼ばれるFCVをめぐる世界の勢力図が固まりつつある。

 トヨタとホンダは15年、日産も17年にFCVの市場投入をめざしており、開発競争が熱を帯びそうだ。水素の供給設備などのインフラの整備や、技術の国際規格づくりなどをめぐっても主導権争いが激しくなる。

 これまでホンダは自前技術にこだわり、他社との提携と距離を置く「孤高」の存在だった。提携に踏み出すことは、ホンダの経営にとっては転機だ。岩村氏は「社内には、単独で開発する方が二人三脚でやるより早いという考えが多かったが、この分野では互いにメリットがある」と話した。

 ホンダは昨年、16年度の四輪車の世界販売を、12年度より5割多い600万台とする野心的目標を発表。遅れた新興国向けの車の開発を強化する一方、先進国向けのエコカーの開発も手を抜けない。今後は他社との協業を広げるのか。経営陣のかじ取りが問われている。(豊岡亮、木村裕明)

 ◆キーワード

 <燃料電池車(FCV)> 燃料の水素を、酸素と反応させてできる電気で動く自動車。二酸化炭素などを排出せず、出るのは水だけ。燃料を補給する時間が電気自動車(EV)より短く、燃料を一度満タンにして走れる距離は、フル充電したEVより長い。次世代のエコカーの切り札とされる。

《追記》
☆本田技研工業情報 「GMとHondaが次世代燃料電池システムの共同開発に合意 〜2020年頃の実用化に向けて燃料電池システムと水素貯蔵システムを共同で開発〜」ここをクリック

asahi.com(2013-07-02)