大型スマホか、小型タブレットか 用途に応じた選び方

 2012年は、10型前後の製品と比べるとコンパクトで持ち歩きしやすい7インチタブレットが躍進した。携帯性と見やすさを両立するサイズが、ユーザーに支持された結果だろう。しかしスマートフォン市場では4型後半から5型モデルが増えており「大型化」の傾向が顕著だ。ユーザーとしてはいったいどちらを選んだらいいのか迷うこともあるだろう。

 今回はこの小型タブレットと大型スマホの違いや使い勝手を検証した。またこの二つの傾向が混じり合う「交錯点」で新たなるヒット商品が生まれる可能性はあるのだろうか。

表示領域の大きさや情報量では7型タブレットが圧倒

 5型スマホの代表としてNTTドコモの「アローズX F−02E」(富士通)、7型タブレットの代表として米グーグルの「ネクサス7」を取り上げる。

 まずは情報閲覧の性能を比較してみよう。わずか2インチの違いではあるが、5型スマホと7型タブレットでは表示面積がかなり変わる。F−02Eの液晶画面は実測値で幅64ミリ高さ112ミリ、ネクサス7は幅94ミリ高さ151ミリ。ホームボタンなどの領域を含むのでその全てを画像などの表示に使えるわけではないが、F−02Eに比べネクサス7は、単純計算で約2倍の表示面積があるのだ。画面サイズの違いは文字の見やすさに直結する。

 例えばPDFファイルや社内で作成したエクセルファイルを閲覧する場合、F−02Eでは全体を見て数値も含めた雰囲気をぱっとつかむことは不可能だと感じる。各部を拡大しなければ分からないことが多いのだ。しかしネクサス7なら、全体を大きく把握する程度なら十分のサイズ感があった。出先でビジネス関係の書類を閲覧する機会が多いなら、考慮すべきポイントと言える。

 またスマホとタブレットで表示方法が変わるアプリもある。例えばスマホの「gmail」だと、スマホモードではメールのタイトルリストと文面を同時に表示することはできない。しかしタブレットモードだと、横表示モードなら左にタイトルリスト、右に選択したメールの文面、という表示になる。また「クローム」でもタブレットモードではタブ名をパソコンのクロームと同じように表示するが、スマホモードではタブ自体を表示しない。

 タブレットではより多くの情報を一画面に表示できるように、画面のレイアウトを変更しているわけだ。今後、画面が5インチならタブレットモードとして機能するアプリが登場する可能性もないではないが、タブレットモード時の画面をF−02E上に表示するとなるとかなり見にくそうだ。スマホ側の画面サイズがもっと大きくなるようなことでもない限り、こうした「モード切り替えの基準」は変わらないことが予想される。

電話が自然に使えるのはスマホ、バッテリーはタブレットが有利

 電子書籍として使う場合にも、前述した表示面積の違いが大きく影響してくる。というのも、F−02Eの液晶画面は文庫本の1ページ分よりも小さい。きちんと判読できるサイズまで文字を拡大すると、表示できる文字数も少なくなりがちだ。しかしネクサス7は新書版の1ページ分程度はある。文字を大きくしてもかなりの文字数を表示でき、読書しているという実感を得やすい。1ページ大の挿絵も拡大せずに楽しめる。

 携帯性と電話機能については、より軽量でコンパクトなF−02Eの方が優れる。F−02Eのサイズは幅69ミリで高さ140ミリ、厚みは10.3ミリだ。重さは157グラム。一方ネクサス7は幅が120ミリで高さ198.5ミリ、厚みは10.45ミリで重さは340グラム(WiFiモデル)。液晶サイズだけで比べるとわずか2インチ分の違いでしかないが、片手で包むようにしても余裕で持てるスマホと違い、タブレットは手のひらに載せ、落とさないように片方のフチに指をかけて持つのが主流だ。そのためにベゼルが広く取られており、こうしたサイズ感の違いにつながっている。

 電話機能はネクサス7では利用できないが、携帯電話キャリアが発売しているタブレットにはデータ通信機能とともに、通話機能が搭載されていることが多い。そのため「7型タブレットでも電話はできる」のだが、スマホのように使うのは少々困難と言わざるを得ない。画面を耳に当てるようにして持つにも、片手をめいっぱい広げてつかむようにして持たなければならないし、スピーカーとマイクの位置も離れていて使いにくい。なにより見た目が異様だ。

 どうしても7型タブレットを使って通話したいなら、ブルートゥース接続のヘッドセットを使うとよいだろう。電話番号の入力や電話帳からの選択はタブレットの画面を見る必要があるが、作業状況的にはデジカメ画像を見たりするときと同じようなスタイルなので、違和感はないはずだ。最近のヘッドセットは音質やマイクの品質も向上しているので、通話程度なら問題なくこなせる。

 軽量性や通常の電話機能という一面だけを取るとこのようにスマホの方が有利だが、内蔵バッテリー容量ではより大きなタブレットの方が勝る。F−02Eは2420mAhだが、ネクサス7は4325mAhと約1.8倍の容量を確保している。持ち歩く機会が多いモバイルデバイスにとって、バッテリー容量は非常に重要。もちろん充電用にモバイルバッテリーを別途持ち歩く手もあるが、あまりスマートな解決方法ではない。

6型タブレット/スマホは登場するか?

 おおむね情報閲覧を主体に考えるなら、より画面が大きくて見やすい7型タブレットが有利。特にスマホとタブレットではアプリの表示方式が違うことも多いので、その点を踏まえてもやはり7型タブレットの方が使いやすいと考えてよい。一方、電話機能やどこにでも持ち歩けるという携帯性を重視するなら、5型スマホの方が便利だろう。

 スマホやタブレットは、そもそも電話というカテゴリに含まれるような製品ではない。メールチェックやインターネット経由の情報収集といった、従来はモバイルノートパソコンが担ってきたような分野を広く侵蝕しつつあるデバイスである以上、その本質からすれば7型タブレットの方が「正しい」ということは言えそうだ。

 こうした「スマホの大型化」と「タブレットの小型化」は、5型後半や6型のディスプレー画面を持つハイブリッドデバイスの登場も促している。例えば韓国のサムスンは5.5型の「ギャラクシーノート2」や、日本では未発売だが6.3型と5.8型をラインアップする「ギャラクシーメガ」を発表している。NECカシオモバイルの「メディアスW」も、2画面分を合わせると5.6型になる。このほかにも年内にこのクラスのスマホを投入する予定を立てているメーカーはいくつかあるようだ。

 このうちギャラクシーノート2やメディアスWは、おおむね5型スマホの延長線上にある製品と感じた。7型タブレットほどの表示領域は確保できないことも影響しているのだろう。6型タブレットはまだ使ったことがないので言えないところだが、メディアスWのような折りたたみ機構を搭載してコンパクトになり、さらに重さが200グラムを切るタイプが主流になるなら、7型タブレットを超えるムーブメントを引き起こす可能性はありそうだ。

 いずれにしても13年から14年にかけて、この分野はまだまだ注目すべき製品が登場してくることは間違いない。モバイルデバイスの進化はまだまだ止まらない。
<<フリーライター 竹内 亮介>>

nikkei.com(2013-05-04)