北極海が暖かいと寒い冬に? 大気の流れ変わり寒気流入

 【中山由美】北極海の氷が減ると日本の冬は寒くなる――。国立極地研究所や海洋研究開発機構(JAMSTEC)の研究で、そんな関係がわかってきた。

 極地研の猪上淳准教授らが、この関係に着目したのは、日本が豪雪に見舞われた2006年。その前の夏の北極は、海氷が記録的に小さかったからだ。調べると、過去にも北極の海氷が小さかった後に日本の冬が寒くなる傾向があった。

 さらに調べると、北極海の中でも、ノルウェー北部のバレンツ海の氷の面積次第で、シベリアへ移動する低気圧の通り道が違っていた。海氷が少ないと、大気の流れが変わり、低気圧が北寄りのコースを通っていた。その分、シベリア高気圧は北に拡大。強い寒気が日本へも流れ込むようになる、という仕組みがわかってきた。前の春に海水温が高いと、冬の氷の面積が小さくなる傾向もあった。

 この冬はどうだったか。日本にはしばしば強い寒気が入り込み、気象庁によると、平年より北日本で1・2度、東日本は0・9度低かった。青森市の酸ケ湯では2月、観測史上最も深い積雪566センチを記録した。

 一方、バレンツ海では昨年12月の海氷は、この時期としては過去30年余りで最小。3月時点で海水温は過去30年で最も高かった。

 今年3月もバレンツ海の水温は高めで、次の冬も海氷が小さくなる可能性が高いという。温暖化で北極の氷が少なくなると、日本では寒い冬が続く可能性もあるという。

 現在、気象庁が長期予報を出す際、ペルー沖の海水温を考慮している。水温が低くなるラニーニャ現象が発生すると日本の冬は寒くなる傾向とみられている。

 猪上准教授は「バレンツ海の状態も日本の冬の寒さを左右する重要な要素とわかってきた。長期予報にも生かしてもらえれば」と話している。

asahi.com(2013-03-30)