軽ベースの新小型車、新興国に投入 ホンダ・伊東社長

 【豊岡亮】ホンダは26日、人気の軽自動車Nシリーズをベースにした小型車を、新興国向けに開発する方針を明らかにした。Nシリーズに投入した技術や部品を生かした競争力の高い小型車が、出遅れた新興国市場での拡販に欠かせないと判断した。伊東孝紳社長が朝日新聞のインタビューで明かした。

 昨年末に発売したNBOX(エヌボックス)などのNシリーズは、車の床下中央に燃料タンクを置いたり、エンジンルームを前後に平たくしたりして室内空間を広くした。今年10月末時点でシリーズ累計18万台強を売るヒットになった。

 伊東氏は「限られた寸法の中で高い性能を出すのは、他地域ではまねのできないほど洗練された日本が誇るべき技術。それ自身が競争力の源泉だ」と指摘。市場のニーズに合わせて車台の長さやエンジンの排気量などに改良を細かく加えながら、Nシリーズをベースにした小型車を新興国に投入することが「将来必要になる」と強調した。

 ホンダは中国やアジアなど新興国市場での販売台数を2016年度に300万台以上に増やす目標を掲げる。伊東氏は、向こう数年間を「新興国の事業を定着させる大事な時期」と位置づけ、主力の小型車フィットシリーズに加え、小型のアジア戦略車ブリオの車台を使ったセダンやスポーツ用多目的車(SUV)を順次投入する計画だ。当面は「ブリオのブランドを育てる」ことに注力するが、Nシリーズをベースにした新型車はその先を見据えた戦略車として開発。ブリオより小型・低価格で投入し、得意の二輪車からの乗り換えを促すことを狙う。

 中国市場では、15年の販売台数を120万台に伸ばす計画だが、反日デモが広がった9月以降、販売が急減した。伊東氏は「(計画の)出ばなをくじかれた。影響はまだ続くのではないか」との見方を示したうえで、「影響が続くなら、(生産能力を増やす)投資のタイミングで、計画を修正するかどうかの判断が必要になる」と述べた。

 日本では、15年までに軽自動車をさらに5モデル追加する予定で、「Nシリーズで16年度に50万台は売りたい」とした。実現すれば、軽市場でのシェアは12年度上期の約16%から25%程度に上がる見通しだ。

asahi.com(2012-11-26)