ホンダ「軽」で国内攻勢 戦略車投入、収益性改善へ
ダイハツ、スズキの2強追う

 ホンダは1日、新型軽自動車「N―ONE(エヌワン)」を2日に発売すると発表した。親しみやすい外観に小型車並みの安全装備などを盛り込んだ。国内市場で軽の比率が約4割に高まるなか、新車攻勢をかけ国内の生産体制を維持し、新たな収益構造の確立もめざす。主戦場となった軽で、先行するダイハツ工業、スズキを追い上げる。

 N―ONEは1967年に発売した同社初の軽「N360」をモチーフにした外観を採用。走行時の安全性を高める車両挙動安定化システムを標準搭載するなど小型車「フィット」を上回る安全性能を実現した。

 燃費性能は1リットルあたり27キロメートル。価格は115万円からでターボ仕様車の価格差は8万円に抑え、値ごろ感を訴えて小型車の顧客層の取り込みも狙う。都内での発表会で峯川尚・日本営業本部長は「N360を知る世代だけでなく都会の若者にも乗ってもらえる車だ」と話した。販売目標は月1万台。事前予約は9400台に達し、2011年に投入した「N BOX」を超えた。

 ホンダは金融危機前、経営資源を北米に集中。軽販売は低迷し10年の販売台数は16万台と4年で半減した。再参入を掲げ売り出したN BOXは4月から5カ月連続で軽首位となるヒットとなった。12年度の軽販売は前年度の2.2倍の35万8000台に増やす。

 ホンダが軽強化に軸足を移したのは、世界の競争環境が一変したからだ。かつては割高な輸出車でも北米で売れ、07年度に国内で生産した車の半分以上を輸出した。だが、長引く円高と新興国市場の拡大で現地生産中心へと方針を転換。輸出を減らす分を軽を伸ばして補う。

 普通車より安い軽で利幅が低下しないようクルマ作りを抜本的に見直した。車台や主要部品を共通化。数十億円かかる金型を複数の車種で使えるようにした。技術者約200人を工場に異動させ、量産体制を迅速に立ち上げた。

 取り組みが奏功し、1台当たりの利幅はフィットを上回る。軽は15年までに5車種追加する計画で、鈴鹿製作所(三重県鈴鹿市)は軽専用工場となり、収益性が一段と高まる見通しだ。今後、世界で販売する車種にも順次採用する。  ダイハツ、スズキは危機感を強める。ダイハツは車体設計や生産性を見直し、燃費性能と低価格の両立を追求。スズキは減速エネルギー回生システムなど新技術を採用した新型車を前倒しして9月に発売した。国内生産維持のカギとなる軽の競争は一段と激しくなる。

《追記》
☆本田技研工業情報 「新型軽乗用車「N-ONE」を発売」ここをクリック

nikkei.com(2012-11-02)