売り方も一新、「ウィンドウズ8」を賢く買うには

 10月26日、マイクロソフトはパソコン用の新OS(基本ソフト)「ウィンドウズ8」を発売した。自分が使用しているパソコンのOSを早くウィンドウズ8に更新したいというユーザーも多いだろう。

 だが、ちょっと待ってほしい。ウィンドウズ7に比べて安価になったので買いやすくなったものの、ウィンドウズ8には旧OSをアップグレードできる「アップグレード版」、新規インストールができる「DSP版」といった機能別のほか、パッケージやダウンロード、優待などさまざまな販売形態があり、混乱する心配があるからだ。今回は、どんなユーザーならどのウィンドウズ8を購入すればよいのかを、わかりやすく解説しよう。

優待プログラムを使えば安く購入できる

 ウィンドウズ8は、これまでと販売形態が異なる。ウィンドウズ7までは、何もデータが入っていないハードディスク駆動装置(HDD)やSSD(半導体ディスク)に新規にインストールする「通常版」と、古いOSが動作しているパソコンを新しいOSにアップグレードするための「アップグレード版」があった。しかしウィンドウズ8には「アップグレード版」しかない。

 アップグレード版を利用できるのは、すでにウィンドウズ7や「Vista」「XP」を持っているユーザーだけで、何も入っていないHDDやSSDにウィンドウズ8を新規にインストールしたいというユーザーは、詳細は後述するが、DSP版で取り組む必要がある。

 アップグレード版は大手量販店やマイクロソフトの直販サイトで購入でき、直販価格は5800円。パッケージで販売するほか、同じ機能が利用できるダウンロード版もある。これはマイクロソフトの特設サイトから購入でき、3300円とパッケージ販売より安い。

 さらに、2012年6月2日から13年1月31日までにウィンドウズ7搭載のパソコンや、後述するDSP版を購入したユーザーに対してなんと1200円でアップグレード版をダウンロードで購入できる「ウィンドウズ8優待購入プログラム」がある。

 なお、これらアップグレード版のエディションは、ウィンドウズ8の上位版でほぼすべての機能を利用できる「ウィンドウズ8 プロ」になる。

 パッケージでは、添付されるディスクから起動し、アップグレード作業を行う。  ダウンロードの場合は、まず特設サイトからダウンロードした「Windows8−UpgradeAssistant」を起動する。そして、ユーザーのパソコン環境がウィンドウズ8にアップグレードできるかどうかをチェックした上で、製品販売の決済を行い、ウィンドウズ8へアップグレードしていく。

DSP版はパーツショップ以外の販路拡大に期待

 新規にインストールするときはDSP版を使う。「DSP」とは「DeliveryServicePartner」の略だ。アップグレード版との違いは、マイクロソフトのサポートがないことだ。アップグレード版は、パッケージとして大手量販店で購入できるが、DSP版は原則的にはPCパーツを販売する小規模小売店舗でしか入手できないことが多い。

 こうした違いは、DSP版の位置づけや販売方法に由来する。そもそもDSP版は、マイクロソフトが直接販売する商品ではない。原則的には各パーツショップがマイクロソフトから仕入れ、自社のホワイトボックスPCにインストールして売るためのOSなのである。 つまりOSといえども「パソコンに含まれるコンポーネントパーツの一つ」であり、サポートはマイクロソフトではなく、販売店が設定する限定的なものになる。

 ウィンドウズ7にもDSP版はあったが、こうした位置付けなので今まではメモリーやCPU(中央演算処理装置)などのPCパーツと一緒でないと購入できなかった。またライセンス上は、同時に購入したPCパーツを組み込んだパソコンにインストールする必要があった。こうした背景により、PCパーツを積極的に扱っていない大手量販店では入手しにくかった。

 一般ユーザーにはあまり知られていないOSの販売形態だったが、ウィンドウズ8はアップグレード版しかないので、新規にインストールするにはDSP版を使うしかない。そこでウィンドウズ8では、DSP版の制限がいくつか解除された。

 一番大きい点は、PCパーツと一緒にして販売する必要がなくなったことだ。これにより、PCパーツを多く扱わない店舗でも販売しやすくなり、販路が広がるだろう。現状でDSP版を入手できるのは、東京・秋葉原などの電気街にあるパーツショップなどだが、今後は地方の大手量販店でもDSP版を入手できるようになるはずだ。

 DSP版の実勢価格は、下位の「無印」と呼ばれるエディションが1万1000円前後、上位のプロが1万6000円前後。アップグレード版に比べると少々高いが、自作PCユーザーや、PC内に仮想的な環境を作って各種実験などを行う場合には、このDSP版が必要になる。DSP版はディスクで提供されるので、セットアップはパッケージ販売と同じくディスクから起動して行う。

■一般ユーザーはまずダウンロード版で

 それぞれの買い方や特徴、セットアップの仕方などを整理してきたが、大まかに言えば今まで使ってきたノートパソコンをウィンドウズ8に更新したいなら「ダウンロード版」が一番お得。もちろん優待版を利用できる権利があるなら優待版だ。新規でパソコンを組み立てるヘビーユーザーなら、DSP版を選択するしかない。

 この2つを大原則として理解しておけば間違いはないだろう。<<フリーライター 竹内 亮介>>

nikkei.com(2012-10-27)