ホンダ、インドにエンジン工場 新興国で巻き返し
300億円を投資

 ホンダは新興国で攻勢をかける。インドに300億円程度を投じてディーゼルエンジン工場を新設し、2013年に稼働。需要が高まるディーゼル車の生産を始める。ブラジルには現地専用の小型車を投入し、新工場を建設する。ホンダは北米に軸足を置いてきたため、新興国展開に出遅れた。拡大が見込めるインド、ブラジルで生産体制を拡充し、巻き返しを図る。

 自動車市場は金融危機後に一変し、新興国が先進国を逆転した。新興国で先行した日産自動車や韓国・現代自動車などが躍進する一方、ホンダはここ数年、世界シェアを落としていた。中国で現地向けの車を開発する方針を打ち出したのに続き、インド、ブラジルでも反転攻勢に出る。

 インドではラジャスタン州にある第2工場の敷地内に新たにエンジン工場を建設する。新興国専用に開発した排気量1500ccのディーゼルエンジンを生産。ウッタルプラデシュ州の第1工場で生産する小型車「シティ」やアジア専用車「ブリオ」に搭載する。

 第2工場は08年に完成したが、金融危機を受け車両組み立てラインは休止し、部品の生産にとどめている。年産能力10万台の第1工場をフル生産に引き上げたうえで第2工場の車両生産を開始し、インドの生産能力を年16万台に増強する。

 インドの自動車市場は世界6位の規模で、ディーゼル車が新車販売の半分を占める。これまでホンダはガソリン車しか生産しておらず、販売が低迷する一因となっていた。ディーゼル車の投入で13年の販売台数を11年の2倍以上の十数万台に増やし、第2工場の稼働率を高める。

 ブラジルには現地専用の小型車を新たに投入する。従来は日本や北米向けに開発した車をそのまま販売していたが、「フィット」をベースにしたより低価格の小型車を13年にも発売する。

 新工場も建設する。セダン「シビック」などを生産する既存工場の生産能力は年12万台。現在、3交代体制を敷いており増産余地は乏しい。年産10万台程度の新工場を建設する方針で、用地の調査に着手。15年にも稼働させる方針だ。投資額は300億円程度になる見通し。

 新興国に出遅れたホンダは北米を向いたクルマ造りを大幅に転換。世界6極に分かれた拠点で、現地に合った仕様に造り込む体制に移行している。成長が見込めるインド、ブラジルで現地仕様車を投入するとともに、生産体制を増強し、成長軌道を取り戻す考えだ。

nikkei.com(2012-09-16)