眠りにつく太陽
著者:桜井邦朋

■地球は寒くなっている!

 白クマの住む場所がなくなるのも、日本の夏がアホほど暑いのも、みな温暖化のせいということになっている。産業活動で排出される炭酸ガスがその元凶だというので、いま世界中が削減に躍起なわけだが、本書を読んで驚いた。温暖化どころかこれから地球はどんどん寒くなるという。本当か。

 人間のほうは大慌てだが、地球が暖かくなったり寒くなったりすること自体は珍しくないらしい。10世紀半ばから300年ほどは大温暖期で、13世紀末から19世紀半ばまで寒冷期に突入。この間、特に気温の低い極小期と呼ばれる小氷河期が何度か出現するのだが、歴史の動向から証拠を引き出しているのが面白い。この時期に冷害による大飢饉や人口減、ペストの流行、暴動が頻発しているのだ。

 そしてこの極小期は太陽に黒点がほとんどない時期、つまり太陽活動が極端に衰退した時期と合致する。気温制御の物理的メカニズムも明快に提示しながら、太陽活動こそ地球の気候変動の原因であると結論している。

 では、現在の太陽はどうなっているか。著者が過去50年で経験したことがないほど極端な無黒点状態で、もはや休眠寸前。この状態が長く続けば再び小氷河期が到来するだろうというのである。

 仮説である。だが非常に説得力がある。炭酸ガス犯人説を疑問視する科学者も多いし(確かに大気中にたった0.04%しかない炭酸ガスだけが原因というのは変な話だ)、ご存知の方もいるだろうが、温暖化説の根拠の一つ、平均気温の急上昇を示すデータにも捏造の疑いがあると暴露されている。

 要するに寒冷化説も温暖化説もまだ仮説にすぎないのだ。ならばいろいろな議論があってよいはずだが、政府もメディアも温暖化説だけを喧伝して、ほかの仮説はまるで無視している。なぜだろう。温暖化への疑念を口にするとひどいヤツだみたいな空気まである。

 全員が一斉に同じ方向を向いて誰も疑問をもたない。そのことが気持ち悪くてしかたがない。

asahi.com(2012-04-24)