ホンダ、ハイブリッド技術を中国企業に供与
エコカー普及主導

 【北京=遠藤淳】ホンダはハイブリッド車(HV)の基幹技術を中国の自動車メーカーに供与する。合弁事業で組む東風汽車(湖北省)のほか幅広いメーカーを対象に供与先を検討。現地メーカーがHVに参入するのを促し、世界最大の自動車市場で普及を目指す。エネルギー消費国としても最大の中国は政府がエコカーの普及を進める計画を打ち出している。ホンダはHVを軸に中国で先行する米欧勢への巻き返しを狙う。

 日本車メーカーではトヨタ自動車が中国でHVの生産のほか、電池など基幹部品の生産も始める見通し。エコカーで世界の二大メーカーが中国戦略を本格化することで、日米などにとどまっているHVの普及に拍車がかかる可能性が出てきた。

 ホンダは「IMA」と呼ぶ独自のHVシステムを展開する。エンジンによる走行を主体とし、発進・加速時にモーターがエンジンの動力を補う簡素な仕組みだ。ガソリン車にモーターと電池を追加するだけで済むため、軽量、低コストで燃費性能を向上させられる。

 IMAはHVの専用車「インサイト」を皮切りにセダンの「シビック」「アコード」、小型車「フィット」などに搭載している。販売実績は日米欧を中心に累計で80万台以上。生産はすべて日本でしている。

 これまでは技術流出を懸念し競争力を左右する先端技術を他社に供与することに慎重だった。だが「HVを中国で本格的に普及させるには技術を使ってもらうのが有効」(ホンダ幹部)との方針に転換。世界最大市場となった中国の企業に有償で技術供与を始める。供与先は今後探るが、まずは東風汽車や広州汽車(広東省)など合弁での提携先が候補となりそう。

 HVはトヨタ自動車も量産しているが、駆動する際のシステムは違う。トヨタ式はエンジンとモーターを効果的に使い分ける仕組みで複雑。コストもかさみ中国メーカーが生産するのは難しいとされる。一方、ホンダのHVシステムは簡易型で「対価などの条件次第で手を挙げる企業はある」(中国自動車メーカー関係者)との見方が多い。

 HVは2011年に国内で約45万台が販売されたが中国では割高なことから普及が遅れている。トヨタの中国での販売台数は推定1000台超、ホンダはシビックハイブリッド4台だった。

 しかし、中国は自動車の普及などで09年に米国を抜き世界最大のエネルギー消費国になった。足元は経済成長が減速しているが、自動車の保有台数は20年に1億6000万台と09年実績の約3倍に達し石油が大幅に不足する事態が予想される。エコカーへの転換が加速する可能性は高い。

 中国政府は18日に次世代エコカーの発展計画を発表、HVなどの普及に力を入れると表明した。市場は今後、本格的に立ち上がる見通しで、ホンダは現地メーカーにIMAを広く搭載してもらい市場の創出を主導する。

 ホンダの11年の中国での新車販売台数は前年比5%減の約62万台。中国全体の販売台数が1851万台と2.5%増える中、苦戦が目立った。

nikkei.com(2012-04-22)