ショーワ、米大手との提携促す革新の波

 ホンダ系の部品大手、ショーワの先月末の発表が業界内に波紋を広げている。米国の部品大手、TRWと業務提携の検討を開始したと発表したのだ。ショーワはホンダが発行済み株式の3分の1強を保有するグループ企業。リリースを見た関係者は一瞬「ホンダ系の再編が始まるのか」と身構えた。

 今回の提携の狙いは電動パワーステアリングの共同開発。発表文には「資本提携を含まない検討」とわざわざ書いてあるから、短期間で資本の異動を伴う再編につながるとは考えにくい。とはいえ、現在ホンダ系部品メーカーはホンダへの供給がほとんどで、生産や開発の面で外部と協力するのは珍しい。ホンダグループの中核を占めるショーワが海外メーカーとの提携を本格的に模索し始めたことは、部品業界で進む大きな環境変化を示していると言える。

 その変化とは車を構成する部品の電動化だ。ショーワのこれまで得意としてきたショックアブソーバー(緩衝器)やパワーステアリングは油圧機構の技術を生かしたもの。油圧機構は一般にエンジンの動力エネルギーを多く必要とし、重い。環境規制の強化や低燃費ニーズの高まりに伴い、油圧機構はモーターなどを使った電動化技術に置き換わり始めている。

 パワーステアリングもここ数年で電動式が急速に成長、ショーワのステアリングも12年3月期は電動式が油圧式を逆転したもよう。ただ、電動パワーステアリング部門の収益性は従来製品に比べ低いようだ。遅れを挽回(ばんかい)するため、これまで消極的だった海外メーカーとの技術提携を探らざるを得なかったとみられる。

 ショーワが交渉を始めた相手のTRWは2011年度の売上高が162億ドル(1兆2474億円、1ドル=77円で換算)と、ショーワの約6倍。ステアリング部門はそのうち4.4%の550億円前後と小ぶりだが、会社全体では独VWや米GMなどから受注しており世界各地に生産拠点を持つ巨大サプライヤー(部品メーカー)だ。電動パワーステアリングのシェア(2009年時点)では3位で、5位のショーワよりも上位にある。

 ショーワが今後業績を伸ばしていくためには、電動パワーステアリングの技術開発を加速するだけにとどまらず、ホンダ以外の様々な車メーカーとの取引を拡大していくことがカギになる。TRWとの関係を構築することが、拡販につながる可能性もありそうだ。

 ただ、ショーワの12年3月期の連結営業利益は、震災やタイ洪水で前の期を下回った公算が大きい。天災影響が一巡し始める13年3月期でもアナリスト予想の平均値(QUICKコンセンサス、3社)で114億円と、07年3月期の最高益(176億円)にはほど遠い。TRWの評価について「リーマンショック後にGMなど米国勢が急減産した影響を受けた。収益力は回復途上にある」(外資系証券アナリスト)との指摘もある。昨年6月に就任した北条陽一社長は元ホンダの取締役事業管理本部長。不振のグループ企業を立ち直らせることができるか。TRWとの提携交渉は復活への試金石になりそうだ。 (三田敬大)

nikkei.com(2012-04-10)