ホンダや第一三共、世界40億人の低所得者を開拓

 途上国などの低所得層を対象とするビジネスが広がっている。ホンダは5万円を切る低価格二輪車をタンザニアで組み立てる。第一三共はマラリア治療薬をインドで発売。ファーストリテイリングはバングラデシュで販売を増やす。年間所得が3千ドル以下の低所得層は世界で約40億人。生活基盤を整備しつつ、将来の成長市場で足がかりを築く。欧米企業が先行してきたが、中国など新興国市場での競争が激化する中、日本企業も新市場の開拓を急ぐ。

 低所得層は所得ピラミッドの底部を構成することから、「ベース・オブ・ピラミッド(BOP)」と呼ばれる。新興国に続く購買層になるとみて欧米企業はBOPビジネスに積極的。一方、日本企業は出遅れていた。

 ホンダはタンザニアで二輪車のノックダウン(KD)生産を始める。政府の許可を受け次第着工し、年5000〜1万台の生産を見込む。中国やインドで製造した部品を輸入し、人手で組み立てる。大型設備は不要で、投資額は数千万〜1億円程度ですむ。

 すでにナイジェリアで低価格二輪車のKD生産を始めており、アフリカの他国にも広げる。未開拓の途上国を専門とする営業部隊を発足させる。

 第一三共のインド子会社ランバクシー・ラボラトリーズは、自社で開発したマラリア治療薬を近く売り出す。インドに続き、アフリカなどでの投入を検討する。BOP層への販売などを通じ、2012年に同社の売上高を11年比約5%増の22億ドルに増やす。

 エーザイは13年から20年にかけ、計22億錠のフィラリア症薬をケニアやハイチなど37カ国2億5千万人の患者らへ無償で供給。知名度を高めて将来のビジネスにつなげる。フィラリア症は蚊によって流行し、足が大きく腫れるなどの症状が出る。

 「ユニクロ」を運営するファーストリテイリングはバングラデシュの委託工場で、専用商品を生産。農村部出身の女性たちが売り込む。取扱商品はTシャツや開襟シャツなどで、価格は1〜3ドル程度。初年度の販売枚数は5万着程度だったもよう。15年度には100万枚まで増やす意向だ。

 ヤクルト本社は中国やインド、ブラジルなど海外14カ国で現地の女性を訪問販売員「ヤクルトレディ」として登用。乳酸菌飲料「ヤクルト」を売り込んでいる。

 BOP事業では欧米企業が先行する。仏ダノンがバングラデシュで低価格ヨーグルトを販売するなど、食品や日用品のメーカーが多い。製品を小分けにして価格を抑えるなどの工夫をしている。

nikkei.com.(2012-04-02)