タイ、洪水対策を本格化
工業団地に防水壁、ダム貯水拡大

 【バンコク=高橋徹】昨年の洪水で大きな被害を受けたタイで次の雨期(5〜10月)が近づいている。操業再開にこぎ着けた企業も被害再発を懸念。工業団地での防水壁設置など再発防止に向けた取り組みが本格化する一方、万が一の事態に備えた政府主導の損害保険制度も近く始動する。

 バンコク北郊外のロジャナ工業団地(アユタヤ県)。周囲78キロをぐるりと囲む盛り土の防水堤に、長さ10メートル、幅1メートルの鉄筋コンクリート板をすき間なく打ち込む工事が24時間態勢で進んでいる。

 ホンダなど218社が工場を構えるロジャナは昨年10月上旬に浸水。水は海抜4.76メートルの防水堤を越えて流れ込み、最高水位は5.31メートルに達した。「100年に1度の発生確率」とされるその水位に、気候変動の影響や余裕高を加味し、新たな防水壁の高さは海抜6.05メートルに設定。洪水シーズン前の8月末までに工事を完了させる計画だ。

 昨年の洪水では水没した中部のアユタヤ、パトムタニ両県の7工業団地で日系450社を含む約800社・888工場が被災。日本経済新聞による各工業団地への取材・集計では、今月15日時点で全工場の64%が部分稼働を含めて復旧した。ただ一部では工場移転に踏み切る例も出ており、工業団地側は防水壁建設に計48億バーツ(約130億円)をつぎ込み、企業のつなぎ留めに躍起だ。

 従来は工業団地に自衛を求めてきたタイ政府も、経済の中枢である首都バンコクと工業団地群は政府が守る方針を表明。3500億バーツ(約9500億円)を予算計上した抜本的な治水対策は時間を要する。次の雨期は、今あるインフラを最大限活用するしかない。

 上流ダムの放水を早めに行って貯水余地を確保したり、農地に意図的に氾濫させたりするほか、河川や運河をフル活用して迅速に排水する方針。「ためる」「流す」の効率化で水量を制御する。

nikkei.com(2012-03-21)