ホンダ、聖域の設計拠点見直し 新車開発早く
研究所から工場に数百人異動

 ホンダは新車開発体制を見直す。開発拠点の一部機能を工場に移し、設計から生産準備までの作業を速める。通常3、4年かかる開発期間を3カ月から半年短縮する。まず四輪車は鈴鹿製作所(三重県鈴鹿市)、二輪車は熊本製作所(熊本県大津町)に開発機能を移す。技術者の独創性を重んじ、“聖域”となってきた設計開発拠点を分散し、新車投入のスピードを上げる。

 軽自動車を生産する鈴鹿製作所に4月1日付で本田技術研究所四輪R&Dセンター(栃木県芳賀町)の分室を設ける。技術者を栃木から異動し、同製作所の一角で今後発売する軽自動車を開発する。製造現場の作業員と直接やりとりしながら生産準備までを担う。

 異動対象は開発期間が長いエンジンや車台(プラットフォーム)を除く、車体などの設計技術者。部品を調達する購買部門の担当者を含め、当初約100人体制で始める。2014年3月までに200人弱まで増やす計画だ。

 二輪車では本田技術研究所二輪R&Dセンター(埼玉県朝霞市)にいた技術者約40人を熊本製作所に移した。年内に数百人規模に増やす。現在は既存車種のモデルチェンジに取り組んでおり、今春以降に新モデルの開発にも着手する。

 従来、技術者は生産準備に入る段階で研究所から工場に数日間出張していた。新型車の設計図面を基に、生産ラインの設備を調整するなど立ち上げ作業を支援していた。

 ホンダは昨年3月の東日本大震災で本田技術研究所の建物が損壊する被害を受けた。軽自動車の技術陣約200人が鈴鹿製作所に一時異動して開発作業を続けたことで、生産現場との意思疎通が円滑になり新車投入までの期間が3カ月短縮した。

 この成果を踏まえ本格的に開発機能の移管を進めることにした。設計開発拠点を持つ米国などにも順次、同様の開発体制を取り入れる方針だ。

 ホンダは自動車業界では珍しく設計開発拠点を別会社にしている。本社と切り離し、開発に専念させるのが狙いで強い発言力を持っていた。だが過度なまでに作り込み、開発に時間がかかるといった課題があった。聖域にメスを入れ、変化が激しくなる世界市場での競争力を高める。

nikkei.com(2012-02-24)