BOSCH 工場見学

 先日(11/23)学校の同窓会で、工場見学のイベントがあり、東松山の箭弓町にあるBOSCH東松山工場を見てきました。はじめに会社概要の説明があり その後に組立てラインの見学 最後は最新のヂーゼル車の試乗というものでした。
 東松山にはBOSCHの工場が2つあるようですが、箭弓神社のあるほうに行きました。BOSCH東松山工場は 東松山の駅西口から8分程度のところにあり、敷地面積は5万坪 従業員は2500人とのことでした。

 BOSCHの工場、活動拠点は全国にありますが、工場は埼玉に多いそうです。 創業は1939年 「陸上車両、航空機、船舶ならびに定置機関に対する ヂーゼルエンジン付属部品の製造および販売」とされているが 戦車がターゲットだったということです。1939年7月に「いすず」と「三菱重工」を株式の引受人とした「ヂーゼル機器」を発足1990年に「ゼクセル」と改名、2000年に「BOSCH」と社名を変更した。取引先は 昔は「いすず」と「日産」が主でしたが、今は「トヨタ」「ホンダ」など主要な自動車メーカー全てとなっているとのことです。確かに出荷場には「ホンダ」向けの部品がありました。
 取り扱っている部品は ヂーゼルシステムとしてコモンレール インジェクター等そのほかに ブレーキシステム、ECUなどの電子機器などです。ここ東松山工場はヂーゼルシステムの部品の加工・組立てをやっているとのことでした。

 小生の感覚は古く ヂーゼルといえば燃料を高圧に圧縮しインジェクタから噴射させるもので 熱効率は良いが 振動・騒音・黒煙等がなかなか解決できない難しい問題で、乗用車向きではないと思っていました。
 環境問題が取りざたされてから ガソリンエンジンにも 廃棄ガス浄化装置、燃料噴射、ECUによる燃焼システムの改善などがあり現在に至っています。 ヂーゼルエンジンはホンダが今まで本気で取り組んでいなかったこともあって、最新情報があまりなかったのですが、今回の工場見学で その新技術の一端を垣間見た感じがします。

 ヂーゼルエンジンを進化させた技術
 ・ 燃料噴射関連:コモンレールシステム、電子制御、高圧噴射、マルチ噴射など
 ・ エンジン本体・補器:直噴、4バルブ、インタークーラ、EGRなど
 ・ 燃料:低硫黄軽油 10ppm 2005年1月より
 ・ 排気ガス後処理関連:触媒関係、エンジンコントロールなど
 進化に大きく寄与した技術として、コモンレールシステムとマルチ噴射システムがあります。コモンレールシステムの主要部品は 「高圧サプライポンプ」「高圧インジェクタ」「コモンレール」これらを制御する「噴射制御ユニット」から成り立っています。

 コモンレールはポンプとインジェクタの間に置かれた、「高圧燃料タンク」のようなものです。これを置くことにより、燃料噴射の細かいコンとロールが出来るようになったとのことです。

 噴射タイミング
 理想的な燃焼をコントロールするために、1回の燃焼サイクルに図のように最大5回に分けて燃料を噴射し、理想的な燃焼に近づけるようにコントロールしています。騒音の低減、ドライバビリティの向上を図っています。

 インジェクタ
 ヂーゼルエンジンは現在1600気圧以上の高圧で燃料を燃焼室に噴射します。高圧での噴射は高い精度のインジェクション技術が必要となります。ピエゾアクチュエータを使ったインジェクタは従来のインジェクタに比べて噴射口の開閉を2倍の速度で行なうことが出来ます。 将来は2000気圧を超えるといいます。

 排気ガス処理システム
 粒子丈物質(PM)はフィルターで取り除きますが、フィルター目詰まりを防ぐために「post噴射」などによりフィルターを600℃前後に昇温させ、堆積したPMを酸化させ除去します。NOxを除去するには還元反応によって無害な窒素(N2)の変換する必要がありますが、還元剤として 尿素の水溶液を使い 反応促進のために触媒を利用する方式が研究され、尿素SCR方式として実現されてきています。

 この工場で作っているのは、コモンレールとインジェクタ 両部品とも精密部品であり、高耐圧部品なので、加工精度 組立て時のコンタミなどをいかに防ぐか問題のようです。インジェクタの組立てはソレノイド式の場合加工精度から組み付け時にシム調整が必要なようです。 昔S600/800のDOHCのタペット調整にシムの選択組立てがありましたが、同じようなことをやっているようです。
 バリとかゴミとかのコンタミも問題のようで、組立てのストレート合格は80%位のようです。洗浄など色々やっているようですが 合格率が低いなという感じでした。

 見学の後に最新のヂーゼル乗用車の試乗をさせてくれました。用意された車は
 ・ベンツ E320 V6 3L ピエゾインジェクタ 224PS トルク510N・M/1600rpm
 ・アウディA8  V6 3L ピエゾインジェクタ
 ・BMW X3  直6 3L ソレノイドインジェクタ
 ・アコード     2.2L ソレノイドインジェクタ

 これらの車は全てデモカーで、環境キャンペーンなどに使っているそうです。走行コースは工場を出て 254号の東松山I/Cの横を抜け 工場に戻る5kmほどのコース。小生が乗ったのは ベンツE320とACC2.2L

 ベンツE320 確かに静で、振動もなくガソリン車と遜色ありません。1600rpmでトップトルクになり そこからトルクがフラットなのでトルクフルで加速は抜群です。低速からの加速は凄いなという感じです。高速からの追い越し加速も凄いとのことでしたが、一般道なので体感は出来ませんでした。しかし車重が2トンあるという、2トンの車体を振り回してあの加速は凄いが「なんでそんなに重くするの?」が正直な感想です。
 それでも町乗りで9km/Lは走ると言いますから確かに燃費はすばらしい。エンジン音 車内は静粛なのですが、車外で空吹かしの音を聞くと結構うるさい。これは昔 トヨタの「レクサス」全バラ検証したときにも同じような感想を持ちました。レジェンドも外で聞いたら結構うるさいから、高級車はそんなものなのかもしれません。

 ACC2.2L 音のレベルはベンツより少しうるさい感じです。これはインジェクタが「ソレノイド」を使っているせいかもしれません。BMWもうるさかったから・・。それにACCはガソリン車として開発されたボデーにヂーゼルを載せていること、ホンダはジーゼルのノウハウをそんなに持っていないので、しかたないかとも思いました。
 これから開発を続ければ改善されてゆくでしょう。
 しかし低速トルクの太さは充分感じられました。

 ご存知のように、日本ではヂーゼル車は普及しておりません。ホンダは欧州市場をにらんでヂーゼル車を投入して行くのだと思いますが、何とかやれるのではないかと思いました。

 BOSCHの人の話では「このベンツの本体価格は800万 諸経費を入れると1000万近くなる。ホンダが手ごろな価格で出してくれると、日本でもヂーゼルが見直されるのでは」と期待していました。燃費・環境問題と考えれば「ハイブリッド」の方向もあり、今後どうなるのかな・・・?という気もします。

記:藤田 功(2006-11-28)