白いカナダ スキーを楽しむ

 スキー同好会(会長 柳沢 孝)の15名のメンバーで3月4日から9日までカナディアンロッキーへスキーに行ってきた。

 ウイスラー、ブラッコムスキー場である。日本から8時間の飛行でバンクーバー着、そこから北方120Km、車で2時間半でもうスキー場である。比較的時間がかからなく、良質の雪に恵まれていることから日本からのツアー客も多い。ソルトレーク冬季オリンピックの滑降の選手団が、合宿をしたのもこの地である。

 北米で最大のスキーエリアであり、その広さは、日本一といわれる八方尾根スキー場の14倍、200を超えるコースバリエーション、最長滑走距離11Kmもあり全てのコースを堪能するには1週間は必要だろう。

 今回参加した15人は夫婦で参加の2組を含めて、ホンダをリタイヤし全員年金生活者である。年齢は当然60歳以上、最高齢者は72歳である。スキー歴はおそらく40年以上の方たちで、スキー技術は全員2級以上のレベルである。

 この計画は、スキー同好会の平成13年度の活動の中で会員の要望から計画されたものである。会員の中には海外経験者も多く、日本のチマチマしたスキー場でリフト待ちに時間をとられ、混雑したゲレンデを気をつけて滑るのに飽きた、自然とたわむれる本来のスキーを楽しみたいとの要望があった。

 ツーリスト間の競争が激しくなり、旅行費用も安くなってきている。時期さえ選べば6日間コースで航空運賃、宿泊費込みで69,800円で行ける。3月に入り天気が安定する時期であると、106,800円である。それにしても国内で混雑の中を滑ることを考えれば、費用対滑走距離の効率は高いのではないだろうか。しかもホンダ開発にお願いしたら、さらに5%の値引きと、日本とカナダの空港使用料、自宅と成田空港の往復の無料宅配券、一人部屋使用の追加料金48,000円をサービスして頂いた。年金生活者の我々にとって嬉しいことである。

 3月4日に成田空港を出発したが、8時間のフライトでバンクーバーへ着くので、エコノミークラスのシートでもそんなに苦にならない。インターネットで調べたバンクーバーの天気予報は雨、着いたらやっぱり雨だった。今シーズン1月に八方で尾根スキーで経験した雨の中のスキーが頭をよぎる。気象衛星が活躍し始めてから飛躍的に天気予報が当たるようになって来た事を実感する。バンクーバーが雨でもウイスラーは700mの標高があるし、スキー場は2000mもあるから雪だろうと考えたい。バスでウイスラーに向かうと雨が徐々に雪に変ってくる。明日は新雪が楽しめそうだ。

 このスキー場には日本では味わえない楽しみ方がある。一つはフレッシュトラックといって朝7:00過ぎにゴンドラでゲレンデ上部にあるレストハウスに向かい、そこでビュッフェスタイルの朝食、その後スキーパトロールによりゲレンデの安全が確認され次第、一般スキーヤーが上がってくる前、まだ誰も滑っていない新雪を滑ることができるのである。初中級者用にグルーミングしたコースは整備されているが、本当に危険な岩場以外、林の中、リフトの下も滑走OKであるから、日本のスキー場みたいにパトロールに追いかけられたり、放送されたりすることは無い。新雪を楽しみたいと思うのはカナダでも同じで雪が降ったとの情報があると、我先に飛び出して行くのは日本人ばかりではない。しかしゲレンデの大きさが違うのでたっぷりと未踏地が残っている。頂上近くは、氷河の上のスキーを楽しむことになる。地面の熱影響を受けないので雪質は安定しているので上手くなった気分になる。今回は2日間フレッシュトラックを体験したが、160$で朝食つきでスキー場を独り占めできる気分である。

 もう一つの楽しみ方はヘリスキーである。ヘリコプターでロッキーの山頂まで行ってそこから氷河を滑り降りるのである。ヘリスキーの70%がウイスラーで行われているというから、元祖、本場のヘリスキーである。ヘリへの乗り方、事故の時の脱出方法など説明を受け12人乗りのジェットヘリで山頂へ向かう。また、ゲレンデの踏み固めたコースを滑るのではないのでそれなりの準備が必要である。なだれに巻き込まれた場合、埋められた位置がわかるように、発信機を取り付けさせられる。スキーが外れると今のワンタッチビンデングでは探すのが困難になる。そこでスキーに結んだリボンを両足に止めるようにする。外れたらリボンを目印にして掘り出さねばならない。スキーの板もヘリスキー用を借りろとさんざん言われた。長さは155cmで巾が130mmだから1セットで丁度スノボーの大きさになる。ヘリスキーに参加した10人のうち7人は借りたが、3人は自分の板で体験してみることにする。遠くから見る山は真っ白で雪がふんわりと積もっているかのように思える。しかしヘリで降りると雪の質が思っていたのと違うことに気がつく。山頂は風でアイスバーン状、斜面は表面は硬く中はやわらかい状態である。それも場所によってクラストしているので、細めのクラッシックスキーを履いた人は曲がるたびに片方のスキーがもぐり次のターンでは持ち上げるのに一苦労していた。幅広スキーはもぐらず滑らかにターン出来るヘリスキー用の優れものである。620C$とチョット高いようであるが、トップガイドと最後に安全を見届けるテールガイド、氷河の先端での昼食つきで3本も体験できるのである。70C$で1回追加することが出来るが、なかには8本も滑った人がいるそうである。森林限界を超えて、周り全体が真っ白な雪の上を滑る体験を一度したらまたやりたいと思うだろう。

 ウイスラーの町は2010年の冬季オリンピックへ名乗りを上げようとしている。町自体もこじんまりしてホテルやレストラン、店がまとまって一つのビレッジを形成している。今回は鉄板焼き、カナダ料理、イタリア料理を食べたが、近くのスーパーマーケットから酒や食料を仕入れればホテルの中で宴会が出来る。スキーで疲れた身体は、ホテル内のジャグジーやサウナでほぐすことが出来る。

 スキーをしている時はあまり気にしなかったが、スキー場を離れる時気がついた。我々の年齢は平均で63〜4才だったことを。70歳を越す人も2名いてヘリスキーまで挑戦された。他人から見ればヘルメットやゴーグルで顔が隠されているとはいえ、まさか70才過ぎとは思わないだろう。いつまでたっても若さを保ち、チャレンジ精神を失わないのは、ホンダの中で育まれたものであろうか。

 何より天気にも恵まれ、ゆったりした気分でスキーを楽しめたことは、時間に制約の無い年金族スキーヤーの特権である。それにしても顔の面の皮の厚い人が凍傷になった以外、全員怪我も無く帰国できたことはこの上ない喜びである。

記:伊藤 洋(2002-03-18)