パソコン改造考

 背景
 ADSLになってから接続の速さに比べ、パソコンの反応の遅さが気になって来た。99年の1月に作製したもので、300MHzのCPUを450MHzにクロック・アップして使用している。ギガヘルツの時代にはいかにも遅いので改造してパワーアップをすることとした。このマザー・ボードに適合するCPUは最早店頭にはないのでCPUの交換は出来ない。仮に中古であったとしても600MHz止まりで、たいしたパワーアップは望めないのでCPUとマザーボードを交換してパワーアップを計ることにした。

 改造方法の検討
 最近時のIntel-CPUの流れと対応マザーボードを簡単に整理してみると下記の様になる。これによるとマザーボード(パソコンの骨格の基盤)の寿命は約1年だ。つまり最新のラインナップで作ったとしても1年後にはパワーアップ出来るCPUは存在しない。ちなみに、昨年6月に作製したPentiumV-700Mhzをパワーアップしようとしても1GHzまででしかも、Pentium4の普及を図る為の価格戦略でPentiumVの方が値段が高く設定されている。 PentiumVの役割はCeleronが受け継ぐようだ。TualatinコアのPentiumV(1.2GHz)の位置付けが気になるが。

 Pentiumの流れ
 99年 PentiumU 〜450MHz(Katmaiコア) マザーチップセット440BX
 00年 PentiumV 〜600MHz(Katmaiコア) マザーチップセット440BX
 00年 PentiumV 〜1GHz(Coppermineコア) マザーチップセットIntel815
 01年 Pentium4 〜2GHz(Willametteコア) マザーチップセットIntel845/850
 02年 Pentium4 〜3GHz(Northwoodコア) マザーチップセットIntel845/850?

 選択肢の検討
 現状で可能なパワーアップの選択肢を検討してみた。

@ Pentium4-1.5GHz+Intel850マザー+DirectRDRAM(256MB)+電源ユニット
  17,000+25,000+11,000+7,000=60,000円

A Pentium4-1.5GHz+Intel845マザー+電源ユニット(SDRAM活用)
  17,000+20,000+7,000=44,000円

B Celeron-1.1GHz+Intel815マザー(SDRAM&電源活用)
  12,000+10,000=22,000円

C AMD Athlon-1.4GHz+Apollo-KT266マザー+DDR-SDRAM(256MB)
  +電源ユニット
  17,000+20,000+6,000+7,000=50,000円

D AMD Athlon-1.4GHz+Apollo-KT133マザー+電源ユニット(SDRAM活用)
  17,000+12,000+7,000=36,000

 この他にAMD-DuronがあるがCeleronと同等と思うので省略。今までPentium4のパフォーマンスはイマイチであったが8月にPentium4−2GHzが出て、AMD Athlon-1.4GHzに肩を並べたか、ややリードという状況だがPentium4−2GHzは68,000円もして手が出ないので2万円以下のCPUで検討した。コスト・パフォーマンスでは断然CのAMD Athlon-1.4GHz+KT266だが、このCPUは熱破壊の心配がある。 熱暴走ではなくいきなり破壊してしまうことがあるようだ。Intel系は温度が上がり過ぎると動作クロックを下げて保護するようになっているが、AMDにはないようである。メモリーの選択もキーを握っている。SDRAMなら現状の資源を活用出来る。但し、帯域幅がDirectRDRAMの約1/3,DDR-SDRAMの約1/2でその分動作が遅くなる。Pentium4とAthlonは電源ユニットに新規格の物が必要。Pentiumでいえば5Vから供給されていたパワーを12Vからの供給に変更されている為、12Vの容量をアップしたものが必要とされる。 AthronはPentiumよりシビアに電源ユニットを選ぶようだ。 Athronのパフォーマンスは非常に魅力だ。Pentium4はアプリケーションがSSE2対応だとパワーを発揮するようであるが、まだ数が少ないし、SSE2ではないソフトではAthronが優位。 しかし、AMDに馴染みが薄いのでいまいち不安が残る。(WindowsXP,OfficeXP,マルチ・メディアソフトがSSE2対応らしい) 又,Pentium4のパフォーマンスを生かす為にはRDRAMを使用すべきであるが、コストがかかりすぎる。若干中途半端ではあるがAのPentium4+SDRAMが無難なところか。

 《追記》
 10月9日AMDより新型のAthronXPシリーズを発売。周波数の表示を外している。最上位の動作周波数は1.53GHzだがPentium-4の1.8GHzより早いと言うことでAthron1800+と呼ばれるようだ。XPと言う名前の通りWindows-XPとの親和性良いとの事。

 部品の調達
 上記のような見当をつけて、秋葉原に出掛けようとしたが、たまたま川越ソフマップの開店日なので寄ってみる。ユニクロ、Loftも同時新規開店で混雑している。Pentium4対応マザーボードをみるとAGPスロット(グラフィックスカードを差し込む所)が今までのもの若干違うのを発見。店員に聞いてみると差込みの安定性を良くする為に桟を入れたとのこと。従来のグラフィックス・カードが問題なく使えるという解答だった。展示品が少なく,価格も秋葉原より高いように感じたので秋葉原に向かうことにする。秋葉原で先程気になっていたAGPスロットを確認すると、AGP-4×でないと対応しないとのこと。新製品で仕方ないが、やはり情報量の多いところでしっかり確認しないと判断を誤る危険性を感じた。今、使用しているグラフィックス・カードがAGP-4×であるかどうかわからないので、BのCeleron-1.1GHzに方向を変換することにした。資源の活用が多いので費用は最も安く、450MHzの2倍以上早くなるのでこれも悪くない選択かなと自分を納得させる。 i815の最新版でB-step対応のマザーボード購入する。TualatinコアのPentiumV(1.2GHz)もOK。費用は、Celeron-1.1GHz:12,500円、マザーボード:12,980円、合計:25,480円であった。

 組立てと調整
 家に帰ってグラフィックス・カードを確認したところ、AGP-4×対応であった。ちょっと残念。ハードの入れ替えは1時間で完了。ソフトを入れ替えるかどうか思案したが、OSからアプリケーションまで新規インストールするのは時間的に大変なのでそのまま流用してみることにする。早速電源を入れてみる。なんなくWindowsが立ち上がったが、新規ハードの読み込みでフリーズ。再起動をかけるがWindowsが立ち上がらなくなった。BIOS(Basic Input Output System ハードディスク等のパソコンを構成するデバイスを管理しOSが各デバイスを利用出来る様にする)の総チェックをしてみる。最近のマザーは取り付けられたハードのデータを読んで自動設定してくれていると思っていたが、Celeron-1.1GHzのデータがマザーのデータ・ベースに入っていないためCPUの設定が出来なかったようで800MHz-FSB133MHz(正しくは1100MHz-100MHz)に設定されていた。グラフィックス・カードの設定も直し、ようやく使用できるようになった。今まではBIOSにはほとんどノータッチで問題なく使用できた為、今回のようにBIOSにじっくり付き合わされたのは初めてである。このCeleronは20%位のクロック・アップが出来そうなので、これも今後の楽しみである。

 最少の費用でパワーアップでき、たいしたトラブルもなく稼動出来たことはよかった。これがパソコンを自作するメリットかなと思う。その反面何らかのトラブルがあって、立ち上がれないリスクも負っている。その場合も自己責任で対処しなければならない。どこにもクレームの持って行くところがない。そんなリスクを背負いながら自作して来たのは、物を作っていく過程のワクワク感と完成した時のなんとも云えない満足感でしょうか。

 使用感と感想
 パワーアップ後の使用感であるが、インターネットはサクサクと快適に使えるようになった。唯一MSNのhot-mail(無料で使えるメール)の画面切り替えが多少は早くなったようだが、まだモタモタしている。(これは,パソコン以外に原因があって夜が特に遅くなるのでアクセス数が多すぎるのではと思っている) 一般のオフィス系アプリケーションは450でもパワー不足は感じられなかったので、あまりメリットはなさそうである。 画像を扱うソフトではどうか、今後検証していくようだ。車と同じで、新車に乗り換えた時の自己満足感に似ている。

 家族にはパワーアップしたことを云っていない。早くなったことに気づいてもいない。それどころか子供はhot-mailが遅いことを訴えている。2.6万円をかけて2.5倍早くしても体感的にはその程度ことです。パソコンを使っているときにCPUが100%働いていることはめったになく普通の使い方では多くて50〜60%であろう。このため、CPUのクロックが上がった割には体感速度がさほど感じられないのであろう。ここで、Intelとマイクロソフトの商業主義的戦略を考える必要がある。企業として勝ち抜いて行かなければならないのは理解するとしても。上記のPentiumのラインアップをみてもわかる通り毎年コアを変えて互換性がないようにしている。これはPentiumを製造した同じ数量のマザーボードに実装されるIntel製のチップセットが売れることを意味している。(もちろんサードパーティ製のチップセットもあるがこれとてIntelとライセンス契約しているのでIntelの収入になる) 一方マイクロソフトは進化と称してOS,アプリケーションソフトを矢継ぎ早に出している。しかし、これらは動作が年々重くなり、高性能なハードを要求する。つまりIntelとマイクロソフトはお互いに企業として良いループを作っている。今回の改造はこの戦略にマンマと乗ってしまった感もある。次回はディスク・トップではなく多分1GHz以上のノート・パソコンになるだろう。パフォーマンスは充分であろうし何よりも静かなのが良い。 又,省エネであるし、スペース・ユーティリティも良い。液晶なので目にも優しい。 唯一の欠点は改造の楽しみがなくなることである。(ディスク・トップの電力はモニターを含めると500W位消費しているのでは)

 一般企業のパソコンの状況を考えると、台数が多いこともあって個人程頻繁に入れ替えをしていない。信頼性が第一の企業ではリスクが伴い、費用,時間がかかるので当然ではあるが。OSも未だにWindowsNT/95であろう。個人でもこれを見習って良いと感じた。アプリケーションについても例えばEXCELでは95から97の変化は進化と感じたがそれ以外の98/2000/XPは使う側からの進化は感じられない。(使いこなしていないのかもしれないが) ちなみに我が家のマッキントシュはここ2,3年進化していない。それでも不足は感じていない。 若干反省を伴う改造ではあった。

記:宮宅 達夫(2001-10-9)