4月から過去最大のクルマ減税
どん底の自動車市場に強力な援軍

 新年度に実施される税制改革で話題を集めそうなのが、環境性能の高いクルマに対する減免税措置だ。政府試算による年間の減税規模は約2100億円と、「グリーン税制」など現行優遇税制の10倍に及ぶ。

 自動車業界では「画期的な措置であり、低炭素車の普及と国内市場の回復に確実につなげたい」(青木哲日本自動車工業会会長)と、どん底状態にある新車販売の強力な援軍との期待が膨らむ。

 減免されるのは、新車購入時に納税している「自動車取得税」(以下、取得税)と「自動車重量税」(同重量税)。重量税は当初の3年分のみが対象となる。この新税制は2009年度から3年間の時限措置となるが、厳密には取得税が3年間、重量税については見直し時期の関係で2009年4月1日から12年4月末までの3年1カ月となる。

 減免は排出ガスおよび燃費両面の性能によって取得税、重量税ともに(1)免除(2)75%軽減(3)50%軽減、の3段階に分かれる(表参照)。乗用車の場合、2005年排出ガス規制を75%低減した、いわゆる「4つ星」(☆☆☆☆)の低排出ガス車が条件となる。

 そのうえで、「2010年度燃費基準」の達成度に応じ、減免の区分が決まる。ただし、ハイブリッド車(HV)や2009年のディーゼル規制を先取りした「クリーンディーゼル車」および電気自動車(EV)などの「次世代環境車」については、免除される(HVについては2010年度燃費基準を25%上回るという条件があるが、市販車はすべて合致する)。

 取得価格200万円で車両重量が1トン超1.5トン未満のHVを例に免税額を試算するとこうなる。取得税(税率5%)は10万円、重量税(車両重量0.5トンごとに年6300円の3年分)は5万6700円、合計15万6700円の税負担が免除される。

 一方、こうした次世代環境車以外の通常のガソリン車なども性能に応じ、減税の対象となる。排ガスが「☆☆☆☆」適合で、2010年度燃費基準(ディーゼルは2005年度基準)を25%上回るものは取得税、重量税ともに軽減率が75%、また同燃費基準を15%上回るものは軽減率が50%となる仕組みだ。

 ちょっとややこしくなるが、重量税についてはこの新税制期間中(2012年4月末まで)に初回の継続車検を受ける「既販車」に限り、環境性能に応じて新車同様に免除〜50%軽減まで3段階の減免措置が受けられる。

 新税制以前に環境対応車を購入したユーザーに配慮する措置であり、具体的には2006年4月以降販売され新税制と同様の環境性能を満たす新車で、初回の継続車検時に重量税2年分が減免税されることになる。

 政府・与党によると、新年度からの減免措置はトラック・バスを含み年間約210万台の新車が対象になる見込みという。新車市場を500万台とすると4割程度がカバーされる。

 また、減免税額は年2100億円規模と試算されている。現在実施されている低燃費車の「グリーン税制」、およびHVなどを対象とした「クリーンエネルギー車税制」の年間減税規模は200億円強なので、10倍程度の拡充となる。

 景気刺激策として大いに期待

 こうした規模からも今回の減免税は、従来の環境対応車へのインセンティブ(誘因)政策という枠を超えるものとなる。つまり、環境対策に加え、明確に景気刺激策としての税制を打ち出したということだ。

 自動車を基幹産業とする日米欧の先進諸国は、金融危機後の新車需要の激減に例外なく苦しんでいる。欧州最大の自動車産業国であるドイツは今年1月下旬に、新車登録から9年以上を経過した車両を一定の環境性能を満たしたクルマに買い替える際、ユーザーに約30万円の補助金を支給するという需要刺激策を講じた。

 効果はてきめんで、2月の新車需要は前年同月を22%上回った。対象は60万台(総予算約1800億円)の限定なので、終わったあとの反動も怖いが、ユーザーには明快な仕組みなので即効性がある。

 日本の方は、税制なので単純明快とはいかないが、予算規模はドイツの補助金より大きく、しかも3年間なので持続性も期待できる。政府の試算では年31万台の需要押し上げ効果が見込まれる。

 ユーザーへの理解活動を含め、この税制をどう需要に結びつけるかは業界の腕の見せどころだ。<<池原照雄の最強業界探訪ー自動車プラスα>>

nikkeibp.co.jp(2009-03-09)