なぜ壊れる?パソコンと周辺機器<

 パソコンや周辺機器は、思わぬときに壊れる。例えば、コーヒーを飲みながら仕事をしていて、ノートパソコンにコーヒーをこぼしてしまい、パソコンが起動しなくなることがある。また、携帯ノートやデジタルカメラは手軽に持ち運べる半面、落としてしまったり満員電車で圧力を加えられてしまったりして壊れることがある。



 実は、「壊れる仕組み」を知れば、対策を施して、パソコンや周辺機器を壊してしまうリスクを減らすことが可能だ。しかも、ちょっとした注意で回避できるリスクが少なくない。

 「動かない」にもさまざま
 パソコンや周辺機器が使えなくなる典型例は、ハードウエアの故障である。ハードディスクの故障、液晶割れ、基板のショートといった物理的故障でパソコンや周辺機器が使えなくなることが多い。この場合、製品を再び使えるようにするには、修理するしかない。デスクトップパソコンの場合は、キーボードやハードディスクをユーザーが交換することも可能だろうが、ノートパソコンの場合は、そうもいかない。メーカーのサポートなどに問い合わせて、見積もりを取り、修理に時間をかけて復活することになる。手間とコストがかかる。



 一方で、「ユーザーからの修理の問い合わせでは、『パソコンが起動しない』というものが最も多い。その中で、ソフトウエアが問題であるケースも少なくない」(九十九電機)。ソフトウエアのバグや相性の問題、ウイルス感染などによってOSが正しく動作しなくなってしまうことを指す。ソフトウエアに原因があって動作しなくなった場合、対策の基本はリカバリーだ。

 リカバリーは若干の手間がかかるものの、障害に備えて事前にデータのバックアップを取ってさえいれば、不具合が生じる前の状態にユーザー自身で戻すのは、それほど困難ではないはずだ。

 中には、ハードウエアが壊れたわけではないが、動かないということもある。LANケーブルがきちんと挿入されていなくて、「インターネットにつながらない」場合などだ。

 部品には寿命がある
 電気/機械部品の故障には、一般に、(1)初期故障、(2)偶発故障、(3)摩耗故障の3つの種類がある。



 (1)はメーカーの開発や製造上のミスが原因である。要するに不良品である。ソニー製バッテリーの発火問題などはこれに当たる。

 初期故障をユーザーが防ぐのは困難だ。使えなくなる前にユーザーにできる対策は、購入した製品の回収・交換などの情報が出ていないかをメーカーのWebサイトや販売店で確認する程度しかない。

 ひとまず(2)を飛ばして先に(3)を説明しよう。(3)の摩耗故障とは、部品の摩耗や老朽化によって寿命が切れることである。「部品の寿命がきた」という場合は通常(3)を指す。(3)に至るまでの時間や利用回数は、部品や製品によって異なる。

 例えば、一般に半導体の寿命は数十年もあるが、アルミ電解コンデンサーの寿命は利用時間の合計が2〜7年程度である(温度が45度のとき)。温度によっても寿命は変わる。アルミ電解コンデンサーのように化学変化で劣化していく部品は、温度が10度上昇すると寿命が半分になるといわれている(これをアレニウスの法則と呼ぶ)。また、モーターなどの駆動部も回転のたびに摩耗などで劣化したりするため寿命は比較的短い。

 こうした異なる寿命の装置や部品が何百も集まっているのがパソコンや周辺機器である。パソコンを例にすれば、ハードディスク、光学ドライブ、液晶、マザーボード、CPU、メモリーなどがある。デジタルカメラなら、CCDやレンズ、液晶、バッテリーなどだ。これらパソコンや周辺機器を構成する部品の一部が壊れると、全体として機能しなくなってしまう。



 製品寿命は5年程度
 では、電気/機械部品の集合であるパソコンや周辺機器は「何年で寿命(摩耗故障期間に入る)」なのだろうか。自動車の動作保証期間がないのと同じように、パソコンや周辺機器にも明確な期間はない。ただし、メーカーの話を総合すると、パソコンやプリンター、デジタルカメラの設計・開発の目標上の寿命は約5年である。OSのバージョンアップやサポート切れ、異常な使い方、性能への不満などの問題がなければ、この程度の期間は使えるというわけだ。

 それは、各社のマニュアルに記載されている「有寿命部品」という項目を見ても分かる。

 有寿命部品とは、電子情報技術産業協会(JEITA)が2005年3月に策定した「パソコンの有寿命部品の表記に関するガイドライン」によると、「使用頻度や使用環境などにより寿命が短くなる可能性のある部品」のこと。ハードディスクや液晶ディスプレイ、キーボードなどが相当し、定期的な交換が必要な部品なのである。もちろん、交換時期が来るとすぐに使えなくなるというわけではない。これら有寿命部品の交換時期の目安は、多くのメーカーで、1日に8時間×365日間利用した場合で約5年だとしている。



 偶発故障をなくせ
 (2)に戻るとしよう。(2)の偶発故障は、使用環境やユーザーの操作ミスなどの偶発的要因によって起こる故障だ。この故障の多くは、ユーザーの対策によって回避できる。偶発的要因による故障を極力減らすというのが本特集のテーマである。

 壊さずに使うためには、やってはいけないことをやらないに尽きる。各メーカーはマニュアルに「べからず集」を記載している。例えば、「次のような場所では使用/保管しないでください」「次の環境で使用してください」などだ。逆に言うと、こうした記載に反する使い方をすると「壊れる」可能性が高いのだ。マニュアルは読まないという人が多いだろうが、使い始める前に目を通すことをお勧めする。



 パソコンや周辺機器がハードウエア的に故障してしまう要因は大きく4つに分類できる。衝撃・圧力、電気、水、熱――である。これらの4つの要因についてQ&A形式で、故障してしまう仕組みや対策を紹介する。記事を参考に、パソコンや周辺機器を長く使ってほしい。 (吉田 晃、原 隆=日経パソコン)

pc.nikkeibp.co.jp(2007-08-10)