夏休み旅行の高速料金を安く上げるには?

 夏休みともなるとクルマで出かける機会も増えることでしょう。特に家族の人数が多いと電車で移動するよりも交通費を節約できるケースが多いのもメリットです。しかし、このところの燃料価格の高騰は財布に優しくありません。さらに長距離ともなれば高速道路(高速自動車国道)料金も無視できません。旅行のシミュレーションも兼ねて、ETC(自動料金収受システム)を使った場合の高速道路の料金割引制度を検討してみました。

 ETCには時間帯によって三つの割引制度があります。その三つとは、0〜4時の間に適用される深夜割引、22〜6時の間に適用される早朝夜間割引、6〜9時もしくは17〜20時の間に適用される通勤割引です(いずれも曜日に関係なく利用可能)。ここでは東京から静岡に行く場合を例に、料金を比較してみます。

 深夜割引は全国どこでも使え、走行距離にも制限なく、30%の割引となります。東京から静岡までは通常4100円かかりますが、これが2850円に割り引かれます(50円単位で料金を設定しているため)。一方、早朝夜間割引と通勤割引は走行距離が100km以内に制限されますが、50%の割引となります。ただ、早朝夜間割引は東京・大阪の大都市近郊区間(例えば東京から厚木)内を少なくとも1区間走行する必要があります。また、通勤割引は東京、大阪の大都市近郊区間は割引の対象にならないため注意が必要です。

 深夜割引で2850円だった東京から静岡までですが、実は距離が161.8kmと100kmを超えるため、そのままでは早朝夜間や通勤の割引を受けることはできません。ここで、割引を受けるには、東京から100km以内でいったん高速を降りる必要があります。例えば、93.8km先の裾野でいったん降りた場合、通勤割引では1900円、裾野から静岡までは割引なしで1900円なので、合計3800円と通常より300円安くなります。通勤割引は6〜9時の間に高速に乗るか、降りるかすれば適用されますが、朝・夕1回ずつしか割引を受けられないため、裾野から静岡は通常料金となります。

 朝6時までに東京を出発できれば早朝夜間割引が有利です。裾野までの料金は1400円と半額以下。しかも93.8km先の裾野に着くのは7時ごろですから、裾野で降りて再び乗れば通勤割引を使えます。裾野から静岡までは950円となり、合計2350円で行けるのです。この場合、深夜料金よりも安くなりました。

 紹介した例で、通勤割引だけを使った場合、思ったより割引額が低いと思う方もいるでしょう。実はこれには、高速料金の決め方と、特定区間は割引されないという二つの要因が影響しています。

 まず、基本的には長距離になるほど、高速料金は割安に設定されています。100kmを超えて200kmまでの部分は25%引きに、200kmを超えた部分は30%引きになります。従って、高速を細かく降りてしまうと長距離割引の効果が薄れてしまうのです。

 また、通常の高速は1km当たり24.6円に、固定料金150円を足した金額に消費税をかけて料金が設定されますが、特定区間は1km当たりの金額が高くなっています。従って、通勤割引を適用する100kmの中に特定区間が多く含まれると、その距離数以上に割り引かれる部分の原資が減ってしまい、割引額が低くなってしまうのです。

 さて、静岡から東京までの帰路についてですが、日中に出発した場合は、静岡から100km以内の御殿場(78.1km)に17時以降に着くようにしていったん高速を降りれば通勤割引が適用されます。この場合、静岡から御殿場までが1100円、御殿場から東京までが2500円で合計3600円になります。  高速道路のルートや料金は、Webの「ドラなび」で割引料金を含めて確認できます。出発時間や走行距離などを変えて、ぜひ最安の高速料金を見つけてみてください。残念ながら、真っ昼間に出発してしまうといくらETC装着車でも割引は受けられません(ETCマイレージサービスに入っていればポイントはたまりますが)。ETCによる割引に関しては、「早起きは三文の得」が当てはまるようです。 <<林 達彦=日経Automotive Technology>>

techon.nikkeibp.co.jp(2006-08-01)