太陽光半分の明るさを誇るLEDライト

 太陽光半分相当の明るさの30LED
 つい最近,久々に自転車のカタログを見て驚いた。ライトがほとんどLEDを使用したものに切り替わっていたのである。LED照明の性能向上はつとに耳にしていたが,広い実用範囲をあらためて実感した。

 先日,ドイツにて開催されたCeBITで日亜化学工業は発光効率が100lm/Wの白色LEDを発表,2006年6月からサンプル出荷することを明らかにした。蛍光灯の発光効率が概ね85lm/Wもしくは110lm/Wというからほぼ同じ水準に達したことになる。長寿命,低消費電力を主な武器にしてきたLEDだが,すでに本格的な照明器具として利用するための技術は開発されつつある。まだ,発色などの問題もあるが,そうした課題もいずれ解決していくことだろう。

 ちなみにLEDは発光ダイオード(Light Emitting Diode)の略。順方向に電圧を加えた際に発光する半導体素子のことである。米イリノイ大学のニック・ホロニアック(Nick Holonyak Jr.)氏によって1962年に開発された。発光原理はエレクトロルミネセンス (EL) 効果を利用している。

 発光ダイオードは半導体を用いたpn接合と呼ばれる構造で作られている。電流を一定方向にしか流さない整流作用を持っており,カソード(陰極)に対し,アノード(陽極)に正電圧を加えた時に導通する。電子と正孔が異なるエネルギー帯を流れ,合流点で電子と正孔が再結合,その際にエネルギー帯のエネルギー差(バンドギャップ)に相当するエネルギーが放出される。このエネルギーが光となる仕組みだ。放出された光の波長(色)は,pn接合を形成する素材のバンドギャップの大きさが関係する。発光色は用いる材料によって異なり,紫外線領域から可視光域,赤外線領域で発光するものまでできる。例えば,裁判で話題になった青色LEDであれば,主に窒化ガリウム(GaN)を材料とする。

 照明によく使用される白色LEDは単色光ではなく,光の三原色によって実現する。現在は蛍光体を利用した方法が主流だ。発光部分のチップは青色LEDのものを用い,それをYAG系の蛍光体で覆うと,蛍光として得られた黄色と透過してきた青色が合わさり,白色の発光を得られる。また,その他に単純に光の三原色である赤色・緑色・青色の発光ダイオードのチップを用いて一つの発光源として白色を得る方法もある。

 発光ダイオードは低消費電力で大きな光エネルギーを得られるという特性を持つ。当初は輝度が小さかったため,電子機器の動作表示灯などの屋内用途に限られていたが,高輝度の青色や白色の発光ダイオードが出回るようになってからは,競技場のスクリーンなど,フルカラーの大型ディスプレイ,電球の代わりとして信号機,自動車のウィンカーやブレーキランプ,室内照明にも利用されている。

 LEDはアウトドアに最適
 LEDの特徴がその省エネ性と長寿命にあることはすでに説明した。電球に比べると電力消費量は5分の1〜10分の1以下,一方耐久性は電球の10倍以上にもなる。 そんなLEDの特性に目を付け,早くから実用化されているのがアウトドア用の照明器具だ。

 「30LEDスペシャルライト」はアウトドアや災害時などに便利な懐中電灯型の製品。日亜化学工業の最新高輝度LED「NSPW500CS」を30球搭載,5万8000ルクスの明るさを実現した。このLEDは従来品(NEPW500BS)に比べ,1球あたりで約2.8倍(輝度1万8000mcd)の明るさ。30LEDスペシャルライトの明るさは直視できないほどで米国の警備会社が採用しているという。それでいて単1電池で10日以上も点灯し続ける。本体はアルミニウム合金で出来ているため,約400グラムと軽いが,クルマにひかれても壊れない頑丈さを誇る。日常生活防水で災害時などにも活躍する。

 このほか,LEDを使用したアウトドア用の照明として21個のLEDを使用し,ボタンを押せば3段階に明るさを調節できる「3WAY 21LEDヘッドライト」,白色LED7個の光を反射板で拡散することで明るさをアップさせた「LEDレフランタン」などがある。レフランタンは防滴仕様,アルカリ乾電池使用で160時間連続点灯が可能だ。

nikkeibp.co.jp(2006-04-21)