「睡眠はやっぱり最良の健康法」===本のカルテ===
人生、寝たもの勝ち!?

 朝晩、急に冷え込むようになったこの季節。明け方まで遊んだ事が災いしてカゼを引いてしまい、せっかくの連休が台無しになってしまった――。そんな人もいるのではないだろうか。

 これまでは、「カラオケボックスで誰かがカゼのウイルスをまき散らしたのかな?」などと思ったりもしていたのだが、この本を読んで「そうか!」と合点がいった。

 たった一晩の徹夜でも、免疫力は確実に下がってしまう。なんと、がんの免疫に大切なナチュラルキラー細胞を調べると活性が28%も低下する。免疫反応に必要な化学伝達物質の分泌も減る。また、せっかくインフルエンザの予防注射を受けても、そのあと睡眠不足だと免疫力が高まらないという。

 著者のポール・マーティンは英国ケンブリッジ大学から、行動生物学の博士号も授与されている気鋭のサイエンス・ライター。こうした睡眠と健康の驚くべき関連を、最新の科学研究をもとに、平易に伝えてくれる。

 睡眠は肥満や肌の衰えとも関連する。健康な人でも、6日間1日4時間しか眠らないと、糖尿病の初期に近い体質に変わり、肥満しやすくなる。

 また、ネズミから睡眠を奪う実験をすると、皮膚が醜く損傷するという。人でも睡眠不足で、ニキビの悪化や肌のバリア機能が損なわれるなどのデータが知られている、と指摘する。

 「科学的なデータを総合すると、もっと眠ることの優先順位を上げて欲しい。睡眠否定論者に惑わされてはいけない」と、著者。

 カゼ、ダイエット、美肌のためにも、「寝たもの勝ち」だ。

日経BP健康(2005-10)