トマトジュース飲んで、運動後も疲れ知らず
乳酸の代謝を促し、疲労感を軽減する効果<

 運動した後に疲れるのは、「乳酸」という疲労物質が筋肉中に蓄積することが主な原因だ。乳酸はある程度、激しい運動を行うと発生する。運動後の疲れを残さないためには、筋肉中の乳酸濃度をいかに速やかに下げるかがカギとなる。

 筋肉中の乳酸濃度を下げるために一般的に行われている方法は、運動後に軽く行うストレッチや体操だ。乳酸が発生しない程度に軽く体を動かすことで、筋肉中にたまった乳酸を血液中におし流すというもの。他には、梅干のようにクエン酸を多く含む食品を摂取して、乳酸が速やかに代謝されるようにする方法などもある。また、運動中にアミノ酸を含むスポーツ飲料を飲むと、疲れにくくなるとも言われている。

 さらに、7月に開かれた日本運動生理学会では、運動の合間にトマトジュースを飲むと、運動後の疲労を軽減する可能性があることが、カゴメと国際福祉大学の共同研究で明らかにされた。

 トマトには、有機酸やアミノ酸、そして抗酸化作用のあるカルテノイドのリコピンなどが多く含まれている。研究グループでは、運動する人がトマトを摂取することで、酸化ストレスや疲労などの障害を減らすことができるのではないかと考えた。

 研究では、健康な成人10人に、「30分の運動(前半の運動)」→「60分の休憩とトマトジュース、または水の飲用」→「30分の運動(後半の運動)」→「60分の休憩」を行ってもらった。運動は心拍数が130回/分程度になる強度で、自転車エルゴメーターをこいでもらった。飲用したトマトジュース、または水の量はそれぞれ320mLだった。

 運動後の疲れは、「自覚的運動強度(RPE)」という主観による方法と、血液中の乳酸値を測定する方法で評価した。自覚的運動強度はそれぞれの運動直後に、また乳酸値はそれぞれの運動直後と、後半の運動直後から30分後とさらにその30分後の計4回測定し、前半の運動直後の乳酸値を100として相対値で表した。

 自覚的運動強度は、主観的な疲労感を20段階で表わすものだが、数値が大きいほど「きつい」、小さいと「楽」を意味する。実験では前半の運動直後には有意差は無かったが、後半の運動直後の結果に有意差が見られた。つまり、トマトジュースを飲んだ場合で14.2、水を飲んだ場合で15.5と、トマトジュースを飲んだ方が疲労感が少なかったのだ。

 また、乳酸値の結果は、トマトジュースを飲んだ方が、水を飲用した場合に比べて常に乳酸値の相対値が低いという結果になった。具体的には、2回目の運動直後の値は、トマトジュースを飲んだ場合が200程度、水を飲んだ場合が300を少し超えた程度、30分後だと、トマトジュースを飲んだ群が100程度で、水を飲んだ群が200程度だった。60分後の計測では、トマトジュースを飲んだ群が100を切り、水を飲んだ人は100を少し上回った。

 これにより、運動中にトマトジュースを飲むと、乳酸の代謝が促されることが分かった。夏も終わり、いよいよスポーツの秋がやってくるが、運動後の疲労感の軽減に、トマトジュースも選択肢の一つになりそうだ。 (田村 嘉麿=健康サイト編集)

日経BP健康 (2005-09)