悪徳リフォーム業者から身を守る方法
(住宅紛争処理センター長 工藤忠良氏)

 深刻な社会問題となった訪問販売による悪徳リフォームの被害。自らの身を守り、離れて暮らす身内のリスクを減らすにはどうすればよいのか?

 消費者から寄せられる切実な住宅トラブルの相談に日々対応している、財団法人住宅リフォーム・紛争処理支援センターの住宅紛争処理支援センター長である工藤忠良氏に、本音の「悪徳リフォーム業者シャットアウト法」を聞いた。

■Q:悪徳リフォーム業者の見分け方は?

■A:まずはリストでチェック、建設業許可の有無も重要です

――単刀直入にお聞きします。悪徳リフォーム業者を見分ける方法はありますか?

工藤:まず経済産業省がインターネットなどで公表しているリストがあります。これは訪問販売などで過去にトラブルを起こし、経済産業省や都道府県に行政処分を受けた業者の実名を明らかにしています。ここにはリフォーム業者も含まれています。国民生活センターも最近、都道府県などが行政処分を下した業者名を公表しました。これらのリストに名前が挙がっているようであれば、問題のある業者と判断すべきでしょう。
逆にきちんとした会社かどうかを判断する尺度の一つとして、建設業の許可を取っているかどうかがあります。小さなリフォーム工事などでは建設業許可を取る必要はないのですが、「建設業許可を取っていますか」と尋ねて、オタオタするような会社であれば、避けたほうが無難だと思います。

──ほかにすぐ確認できるチェックポイントはないですか?

工藤氏:今トラブルを起こしている会社の多くは訪問販売系の業者です。もう少し細かな点でいえば、その地域に本店なり、支店なりを構えて営業しているかどうかも判断基準になります。地域に“根付いて”営業している会社であれば、そうそう悪いこともできません。
それから、建築士などの資格者がどのくらいいるか。増改築相談員、マンションリフォームマネジャーといったリフォーム系の資格もあります。有資格者は研修などを受けているので、一定程度の安心材料にはなるでしょう。
そもそも訪問販売で来ること自体が要注意ということで臨む。訪問販売では契約をしないことが大切です。その場で判を押すのは絶対にしないことです。

■Q:用心すべき言葉や行動はありますか?

■A:「今すぐに」「無料」「モニター」という言葉が出たら警戒してください

──用心すべき業者は、言葉や行動から判断できるものですか?

工藤氏:そもそも訪問販売という営業行動自体が要注意なのですが、実はいくつか用心すべきキーワードがあります。

例えば「今すぐに」という言葉がしょっちゅう出てくる。特に「今すぐ判(印鑑)を押してください」と、その場で契約させようとする場合は要注意です。「今すぐに工事をしないと家がつぶれる」とか、「地震が来たら危ない」とか、やたらに不安な気持ちをあおる。基礎がひび割れていると指摘し、「このままでは大変なことになる」「倒れてもおかしくないですよ」と脅す。「だから今すぐに」と。
ほかには「今すぐだったら大工さんの手当てができる」とか、バリエーションは様々ですが、とにかく「今すぐ」「今すぐ」とせかす。こんな傾向のある業者との契約は絶対に避けてください。

それから「無料」という言葉。無料で経営が成り立つわけはないのですが、無料点検、無料診断、無料見積もり……。これらをセールストークにして、結局は高い契約につなげようとする。「無料」という言葉にもだまされてはいけません。

「モニター」「モデル」という言葉もあります。「今この地域を重点的に営業している最中です。つきましてはお安くしますから工事のモニターになってください」という手口がそうです。これは「だから半額にします」という言葉とセットになることが多い。

──新しい手口で目立つものはないでのでしょうか。

工藤氏:最近、ちょこちょこ聞くのが、倒産した会社のアフターサービスを引き継ぎましたというやり口です。どこかでリストを手に入れて、下調べをしたうえでやってくる。ついこの間も私の知り合いで上場企業の役員をリタイヤした人のところに、「我が社が引き継ぐことになり、今日はごあいさつでうかがいました」という業者が来ました。

「今日はごあいさつだけ」と言った後で、「あれれ、ちょっとアンテナが倒れていますね。これもご縁ですから無料で直してあげましょう」とくる。私が相談に乗って止めなさいとアドバイスしたのですが、屋根に上げてしまうと「雨漏りしています」とか「瓦が壊れています」とか次の展開がある。非常に親切なんですね。

それでついつい甘い言葉に乗ってしまう。派手な手口は新聞もにぎわしますが、この手の「アンテナを直します」というような話はなかなか話題にもなりにくい。要注意だと思います。

ほかに、「サービス期間中で今なら半額にしますよ」と言って高額の料金を取る手口も昔からあります。「今月が期末で数字を上げないといけないのでサービスしますよ」というケースもあります。「ローンで支払うと月々たった1万円ですよ」と言って、すごく長い期間、料金を支払わせる手口もあります。

これら以外にも「点検します」「あいさつに来ました」「○○の紹介で来ました」というのは怪しいと考えた方がよいでしょう。 (聞き手・文/安達 功=日経アーキテクチュア編集委員)

日経BP (2005-07-15)