「風邪の効用」===本のカルテ===
風邪を引けばもっと健康になる!?

 病気とは体の具合が悪くなることであり、ならないに越したことはない。たいていの人はそう思っている。もちろん、カゼについてもそうだろう。

 だが本書は、「カゼは鈍った体を回復させるために起こること。自然に経過させれば、むしろ健康に役立つ」と説く。

 科学的根拠のない、荒唐無稽な話に思えるかもしれない。だが虚心に読んでみると、なるほどとうなずきたくなる不思議な説得力が伝わってくる。

 例えば、「健康な体は弾力がある」という話。疲れたり、気張り過ぎたときの体は硬く、鈍くなっているという。こんなときがカゼの出番。熱が出て、やがて汗をかいて抜けていくと、弾力が回復してスッキリするという。だから、薬で熱を抑えるのではなく、入浴などを利用して汗を出してやることを薦める。

 確かに、カゼで熱が出たときに、部屋を暖めて汗をかかせるのは、昔ながらの療養法の一つ。そして悪寒が去って汗が出れば、妙にサッパリした気分になる。そんな体験を持つ人も多いのではないか。

 大事なのは、こういった体が発するメッセージを感じ取ること。「疲れて背中が硬い」「汗が出てさっぱりした」などといった感覚に敏感であれば、自分の体の状態や、何が必要なのかは本能的にわかるはずだ。本書は「カゼ」というキーワードを入り口に、そんな健康観を伝えている。

 この本は、もともと1962年に出版された本の再編版である。著者は「野口整体」と呼ばれる健康法の創始者。弟子たちに語った講義録をまとめたものなので、専門用語があちこちに出てくるが、まずはあまり気にせずに読み進むといいだろう。全体のメッセージは感じられるはずだ。


日経BP社(2005-02-12)