“働かないアリ”と
組織における“脇役”を考える

 有名な働きアリの観察の研究がある。一生懸命働いているように見えるアリの行列をよく観察すると、働いているアリを横目にただ動き回っているだけのアリたちがいる。彼らは、一見忙しそうに動いているのだが、実は行列に沿って行き来しているだけでエサを担いでいるわけではない。

 動いているだけ、“働いているフリ”をしているだけというアリが全体の2割はいるという。働いているアリについてもよく観察してみると、大変よく働くアリと、普通の働きのアリがいる。全体の割合を観察するとよく働くアリが2割、普通に働くアリが6割、全く働かないアリが2割という構成になるようだ。

 次に、よく働くアリだけを一カ所に集めて、新たなアリの組織を作ってみる。すると、なぜかまた働かないアリが出てくる。よく働くアリだけの集団を何度作っても、時間がたつと自然に2:6:2の比率でアリは仕事を分担するようになる。逆に働かないアリだけの集団を作ると、さすがに作業能率は落ちるのだが、それでも働かないアリの集団の中からよく働くアリが2割ほど登場するようだ。

 ご存じの方も多いと思うが、この観察研究はビジネスの世界でもよく注目されている。大企業で“デキる”人材だけを集めてスタートした特命プロジェクトが大失敗したり、プロスポーツの世界でスタープレイヤーを集めたチームがまったく優勝にからめなかったりするたびに、この法則はかなり当たっているのではないかという気がしてくる。

■“働かないアリ”がいなくなった後の疲弊感

 ところでこの研究にはまだ未知の研究分野があるらしい。最近聞いたのだが「どうも働かないアリには組織の中でなんらかの役割があるのではないか」という新しい研究が行われているという話だ。

 この話を最初聞いた直後には、「そんなバカなことはないだろう。働かないアリに役割があるなんて」と思ったのだが、すぐに「いや、人間の組織ではこの話は当てはまっているかもしれない」と思い直した。つまり、こういうことである。

 僕の取引先企業の多くは、ここ数年の不況を乗り切るためにかなり踏み込んだリストラを実施してきた。組織の中であまり働いていない人を配置転換したり、退職勧告を出したりして人の数を減らしていった。その結果何が起きたか。社内に疲弊感が広がり、徐々に生産性が落ちている部署が増えているように見受けられる。

 リストラの理論的根拠の一つに、「2割の人材が残り8割の人材を食わせている」という経験則がある。従業員の行動と企業の利益を分析してみると、利益の8割は2割の従業員からもたらされるというのだ。残りの従業員のうち、6割は自分の給与分を稼ぐのが精一杯。最後の2割は自分の給料を稼ぐどころか利益の足をひっぱっているということになる。これが、いわゆる「パレートの法則」である。

  ☆詳しくはこちらでご覧いただけます。ここをクリック

日経BP社(2005-02-03)