「西洋フキ」「シソ」「しょうゆ」が効果大
<<花粉症対策>>

 花粉症対策のサプリメントには様々な商品が発売されているが、主な有効成分として、乳酸菌やトマト、シソ、甜茶(てんちゃ)、ミント、フキ、バラ、柿葉、柑橘(かんきつ)類、シジュウム、キノコ――などがある。

 また、これらのうち、トマトやシソ、甜茶、ミント、フキなどの植物は、ポリフェノール成分が、アレルギーの抑制に寄与すると考えられていることについても触れた。

 こうした成分の多くは、人に対する試験で効果を実証した成果が、論文や学会発表などで報告されている。しかし実は、乳酸菌やポリフェノールなどの研究成果の多くは、学会で口頭やポスターで発表しただけのものが多い。

 このような学会発表では、他の専門家が内容を十分にチェックするのは難しく、また詳しい発表内容も記録に残らないのが問題だ。

 一方、論文として成果が発表されれば、データは記録に残る。この点では学会発表より優れているといえる。しかし実際には、専門の論文誌の中には、他の専門家がしっかりチェックすることなく、論文が掲載されるジャーナルが少なからずあるのも事実だ。

 少し難しい話になるが、信頼性が高い論文誌は、学術論文を同分野の学者たちが審査する「ピアレビュー」という手順を経てから、論文を公表する。このような専門誌に成果が論文として載っていれば、その結果はまず信用できるといえる。

 それでは「ピアレビュー」を経ている専門誌の論文を探すにはどうしたらよいか。この検索に重宝するのが、米国で構築されている膨大な医学論文データベース「PubMed」だ。このデータベースには、審査レベルが一定以上の専門誌の論文のみが、登録・収載されている。

 日本で商品化されている花粉症対策サプリメントの中で、人での試験で花粉症の症状を改善した成果が、この「PubMed」の論文として発表されているのは3種類ある。

 まずは、「西洋フキのエキス」。花粉症患者のQOL(生活の質)を改善する効果が、医薬品である抗ヒスタミン薬と同じ程度認められたという論文が、2002年に発表された)。

 この成分を配合したサプリメントは、日本では、「ペタドレックス」が、ひまわりネットワークから販売されている。

 2番目は、「シソのエキス」。シソは、研究開発力がしっかりしている国内企業に限定しても、少なくとも4社がシソの葉や実のエキスを開発し、素材として実用化している。

 この中で、PubMed論文として人での試験の成果が発表されているのは、明治製菓の赤シソエキス。日本で行われた人での試験で、スギ花粉症の症状を緩和できたという論文が2004年3月に発表になった)。

 この赤シソエキスは複数の企業の花粉対策飴などに配合されている。有効性を確認したエキス量をしっかり配合した商品としては、「しそでノックアウト」という明治製菓の100ミリリットル瓶入りドリンクがある。

 同じシソのエキスでも、明治製菓のほかの企業が生産しているものは、成分の規格などがこの論文のものとは異なることも覚えておこう。

 3番目は、しょうゆの多糖類(SPS)。これは2004年12月に商品化されたばかりのニューフェース。日本ならではの素材というのもちょっと惹かれるものがある。

 昨年末までに、スギ花粉症のアレルギー症状を改善できたという論文の掲載が決まった(Int J Mol Med. 印刷中)。これより先に、通年性アレルギーの症状を緩和できたという成果は2004年11月に論文として公表になった)。

 このSPSの開発に成功したのは、淡口(うすくち)しょうゆの最大手であるヒガシマル醤油(本社:兵庫県龍野市)。SPS配合のサプリメント「四季爽快」を商品化し、まずは2004年12月1日からネット販売を開始した。

 上記の西洋フキ、シソ、それにしょうゆの3成分いずれも、科学的にエビデンス度が最も高いとされるランダム化比較試験(RCT)という手法によって、人での試験で効果が確認され、しかもその成果がしっかりした論文として公表されている。だから、効果の信頼性は高いといえる。

 ところが、このエビデンス話には続きがある。実は、1番目の西洋フキは、その後、有効性について異なった結果となった論文が2004年夏に公表された。この人での試験では、西洋フキの効果が認められなかったのだ)。

 論文ごとに結果が異なってしまうのは、厳密なピアレビューの論文といえどもよくあることだ。そもそも、RCTという手法が万能というわけではない。しょせん、十把一からげの方法論に過ぎないからだ。実際は、体質は個々人によって異なるし、また、同一人物でも体調は常に変動している。

 当然のことながら万人に効くというわけではない。だから、体質や体調によっては効果が実感できる場合があることが、厳密な論文によって示されているといった見方をするのが適切といえそうだ。(河田 孝雄=医療局編集委員)

nikkeibp.jp健康(2005-01-13)