ADSLとISDNは共存できない

 1年前の2001年「Yahoo! BB」が登場し、他社を圧倒するサービス内容と低価格で話題を集めていた時期。ADSLが1.5Mbpsから一気に8Mbpsの高速サービスに移行し、低価格化も急速に進んだ。2002年秋には、更に12Mbpsまで高速化するなど、話題も豊富だ。

 すでにご承知のように、現在ISDNに加入しているユーザーが、ADSLを引く場合に電話回線をアナログ電話回線に戻すか、ADSL用に別途回線を引く必要がある。  「アナログよりも高品質」ということで、ISDNが一時期ブームになった。数万円も投資して、高価なTA(Terminal Adapter:従来のアナログ回線で利用してきた電話機、ファックス、モデム、パソコンなどをISDN回線に接続する機器)やルーター、DSU(Digital Service Unit :デジタル回線接続装置)などをそろえたユーザーも多いと思う。アナログ電話に戻すと、これらの“設備投資”がムダになってしまう。
 なぜADSLに乗り換えるときに、昔ながらのアナログ電話に戻さなければいけないのだろうか?。ISDN、ADSL、アナログ電話が利用している周波数を整理すると、
* ISDNは、0〜320kHzの範囲の周波数を使って、音声通話やデータ通信を
  している。更に、320kHzを超えた帯域にノイズが発生しやすい。
* ADSL8Mbpsでは、上りの信号(ユーザー宅からNTT局への信号)は
  25k〜138kHzの周波数帯を、下りの信号(局からユーザー宅)は
  138k〜1.1MHzの周波数帯を使っている。
  このようにISDNとADSLの両者が使っている信号の周波数帯は
  重なっており、同時に使うことはできない。
* アナログ電話が使っている周波数帯は0〜4kHzであり、ADSLと重なって
  いないため、アナログ電話とADSLは、1本の電話線で同時に使うことが
  できる。

 せっかくアナログ回線に変えてADSLを導入しても、周囲にISDNユーザーがいると、ADSLの速度が遅くなることがある。通常、電話回線は数百〜数千回線が束ねてNTT局に収容される。この際、ADSLとISDNの線が隣接していると、お互いに干渉を起こす。干渉がひどくなると、ISDNは通信が出来なくなり、ADSLは通信速度がどんどん遅くなってしまう。
 この様に、1つのシステム(同一の回線)をすみ分けして活用するには、難しい課題が有るようです。

《追記》
“ISDN利用者が電話番号変更せずにADSL移行可能”
2002-08-23の報道によると、
NTT東西は、ISDN利用者がADSLに移行する際に、アナログ回線に変更しても、現在使っている電話番号を変更せずに済むサービスを9月2日から始める。 これは、システムを見直すことで、同一番号のまま、移行することを可能にした。ただし同時に、局内工事費を2,000円から3,000円に値上げする。

記:山下 岩男(2002-08-11)